男女別の定員数の記載は一切なかった

文部科学省の前局長の息子を不正に合格させたとして前理事長と前学長(2人とも辞職)が贈賄罪で在宅起訴された東京医科大学(東京都新宿区)が、医学部医学科の一般入試で女子の得点を一律に減点し、女子合格者数を抑えていた。

女性の社会進出が当たり前になっているいまの時代に逆行し、大学という教育機関として恥ずべき行為である。開いた口がふさがらない。

文科省によると、一般的に入試の募集要項に男女別の定員数を明記していれば、大学の責任で合格者の調整は可能だ。

しかし東京医大の募集要項には出願要件や定員数などは記載されていたものの、男女別の定員数の記載は一切なかった。受験者に対し、説明もしなかった。

東京医大の2009年度の一般入試では、受験者数に対する合格率は男子が7.9%、女子が5.0%。合格者に占める女子の割合は24.5%だった。それが2010年度は男子8.6%、女子10.2%となり、女子が合格者の38.1%を占めた。

しかしながら2011年度以降は女子が男子を上回ることはなくなった。女子を故意に減点し、女子の合格者を抑えていたとみられる。

東京医科大学の正門(東京都新宿区 写真=時事通信フォト)

質問を受け付けなかった15年前の「5分会見」

贈賄罪、裏口入学、女子受験生差別……。どうして東京医大は不正が絶えないのだろうか。

そこで思い出されるのが、15年前の2003年11月11日に東京医大病院(東京・西新宿)で行われた、わずか5分の記者会見である。

2003年8月4日、東京医大病院はカテーテルの挿入ミスを犯した。挿入ミスで女性患者は意識不明の重体となり、脳死状態とされた。

結局、女性患者は1年半後に死亡したが、この医療ミスが同年11月11日付の産経新聞朝刊のスクープ記事で明らかになり、記者会見が開かれた。

記者会見は病院長と2人の副院長の計3人が出席し、医療事故について形だけの謝罪はしたが、記者の質問は受け付けず、「司直の手に委ねられており、この場での質問には一切、お答えできない」と5分で一方的に記者会見を打ち切った。

記者会見の様子は当時、テレビで何度も放映された。いま思い出しても、ひどい記者会見だった。あのときの病院長が今回の文科省汚職事件で在宅起訴された前理事長なのだ。

今年8月5日付の読売新聞の報道(1面トップの特ダネ記事)によれば、女子受験生の合格者数を抑制するよう指示を出していたのも、この前理事長だ。

どうやら前理事長のようなトップの采配を許してきた問題が、東京医大にはある。