東京医科大の「裏口入学」をめぐる事件で、不正合格した学生が過去にも相当数いたと報じられている。この問題は東京医大だけで済むのか。「私立医大卒」の医師全体にも疑念が生じつつある。信頼できる医師を選び、腕の悪い医師を避けるには、なにを基準にするべきか。フリーランス麻酔科医の筒井冨美氏が解説する――。(前編・全2回)

医大に「裏口入学」して医師になった人がかなりいる?

東京医科大学の「裏口入学」をめぐる事件で、次々と手口の詳細が明らかになってきた。同じ医療の現場で働く人間として、これほど根性の腐った医大が存在するのかとあきれ果てている。

逮捕された、文部科学省の前科学技術・学術政策局長の佐野太容疑者(59)(写真提供=文部科学省)

産経ニュース(7月15日付)によると、「数年前まで毎年10人前後の受験生を不正に合格させていた」。さらに朝日新聞デジタル(7月19日付)によると、「同窓会が過去に、合否判定で優遇を求める受験者のリストを作成し、同大に提出していた」という。

こうなると、東京医大に裏口入学して医師になった人間が相当数にのぼることが推測できる。患者側が「ズルして医者になった医者を受診して大丈夫なのか?」「裏口疑惑の私大卒の医者は避けたほうがよいのか?」という疑問を持ったとしても不思議ではない。

多くの病院ではウェブサイトに医師の学歴や経歴を紹介している。本稿では、学歴や経歴から自分にぴったりの医師を選ぶヒントを提示したい。

平凡な私立医大卒ドクターに命を預けて大丈夫か

私見では、医者としての能力と「出身医大の偏差値」は、あまり相関していないように思う。2012年、天皇陛下の心臓手術で、日本大学出身の天野篤先生が抜擢されたのが好例であろう。

東京医大に限らず、医大入試では今なお「学力以外の要素による加点」が行われているのは公然の秘密である(過去記事参照:「医学部入試"女子は男子より不利"の裏常識」)。しかし、「地方私立医大出身ドクターでも卒業試験と医師国家試験を突破できた人材ならば、プロ医師としてレベルは低くないし、相応の努力家なので、気にせず受診すべき」というのが私の考えである。

現在の医大入試は難関であり、地方私立医大といえども早慶レベルの学力が要求され、コネ学生でもMARCH理系レベルの学力が必要となる。さらに、卒業も簡単ではない。医師国家試験の合格率が公表されるようになったため、下位の私立医大ほど授業の出席や課題提出、進級試験などでガチガチに学生を管理する傾向がある。

このため最近は授業についていけずに、留年や中退する学生が目立つ。「コネで大幅加点」となった学生も、大学を卒業し、国家試験に合格するまで順調だったかどうかは怪しい。