沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が、8月8日、膵臓(すいぞう)がんのため沖縄県浦添市の病院で死去した。67歳だった。2014年の県知事選で初当選し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に強く反対していた。この辺野古移設をめぐって、朝日新聞と読売新聞の社説が意見を対立させている。一体どちらが正しいのか。そして翁長氏の遺志はどうなるのか——。
2018年4月25日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に向けた護岸工事の着手から1年。工事に反対し、カヌーなどで抗議活動をする人たち(写真=時事通信フォト)

正面から対立してきた沖縄県知事と安倍政権

その立場やスタンスの違いでこれほど意見が分かれるのも珍しいと思う。

沖縄県の翁長雄志知事が米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設について辺野古沿岸部の埋め立て承認を撤回する考えを示した。7月27日、沖縄県庁で行われた記者会見で表明した。翁長氏は「あらゆる方法を駆使して米軍基地は造らせないという公約の実現に全力で取り組む」などと訴えた。

埋め立ては前知事による承認だった。防衛省沖縄防衛局は、処分取り消しの行政訴訟や執行停止の申し立てなどの法的措置で正面から対抗する。

埋め立て承認の撤回で国の工事は一時中断する。8月17日に予定されている辺野古沖での土砂投入が遅れる見通しだ。ただ対抗措置で国の主張が認められれば、工事は再開される。

この米軍基地の辺野古移設問題では、新聞社の社説が賛成と反対で真っ二つにわかれている。どちらの言い分が正しいのか。読み比べてみたい。

「マヨネーズくらい」の軟弱地盤を国が隠す?

まずは移設反対派の朝日新聞。7月28日付の社説で「目にあまる政府の背信」(見出し)と訴え、新たに判明した地盤の脆弱さとそれにともなうコストの問題をこう取り上げる。

「今回、県に『撤回』を決断させた最大の要因は、今月初めに沖縄防衛局が県側に部分開示した地質調査報告書の内容だ。埋め立て用の護岸を造成する沖合の海底の一部が、砂や粘土でできていて、想定とは大きく異なる軟弱地盤であることを示すデータが多数並んでいた」
「地盤工学の専門家によると、難工事となった東京・羽田空港の拡張現場の様子に似ていて、『マヨネーズくらい』の軟らかな土壌が、深さ40メートルにわたって重なっている。政府が届け出ている設計や工法では建設は不可能で、その変更、そして費用の高騰は避けられないという」

マヨネーズにたとえられるような軟弱地盤の存在がどうして早い時点で分からなかったのだろうか。こう疑問に思いながら次を読むと、朝日社説は国の“隠蔽行為”を指摘する。

「驚くのは、報告書は2年前の3月に完成していたのに、政府は明らかにせず、県民や県の情報公開請求を受けてようやく開示したことだ。加えて、『他の調査結果を踏まえて総合的に強度を判断する』として具体的な対策を打ち出さず、工法の変更許可も申請していない」

朝日社説の指摘の通りであるなら、ひどい話である。