「よこしまなことが通ることに病理がある」

内部調査報告書の公表を受け、新聞各紙は8日付から9日付紙面で社説のテーマに取り上げている。

毎日新聞は「入試の名のもとに、これほど大規模な不正がまかり通ってきたことにあきれる」と書き出す。

不正な操作について「報告では、問題発覚の発端となった文部科学省の前局長の息子が不正に合格したことに加え、女子や3浪以上の多浪の男子受験生が不利になる得点操作も確認された」と書いた後、こう指摘する。

「女子は医師になっても出産や育児などで辞める。多浪生は学業が伸び悩む。そんな不合理な理由で『排除』されていた。卒業生の子供らは、受け入れることで寄付金を多く集めたかったというのが理由だ」と指摘する。

毎日社説はさらにこう主張する。

「操作は、前理事長と前学長の判断で行われていた。2人は不正合格した受験生の親から謝礼を受け取ることもあったという。大学にとって最も重要な入試で、このようなよこしまなことが通ることに病理がある」

「物言えぬ体質」「機能不全」「身勝手な大学運営」

そう、「病理」なのである。病理とは病気の原理であり、病気の理論だ。その病気の原因を探るのが、病理学になる。

本来、患者の病気の原因を突き止めて医学研究に貢献するとともに、患者を治療していくのが医大や医大病院の役割だ。それなのに肝心の入試で大きな不正をはたらき、しかも医大という組織がそれを食い止められない。ガバナンス(統治能力)などまるで皆無なのである。

毎日社説も次のように言及する。

「理事長らの暴走を許してきた理事会も問題だ。理事16人のうち13人が同大出身者か関係者で、物言えぬ体質があったという」
「こうした大学内の機能不全が不正入試を続けてきた原因だろう。身勝手な大学運営と言わざるを得ない」

「物言えぬ体質」「機能不全」「身勝手な大学運営」。どれも見事なまでに東京医大にあてはまる。

「ガバナンスを欠き、不正を抑止できなかった」

8月9日付の読売新聞も「ガバナンスの欠如が露呈した」との見出しで東京医大を厳しく批判する。

その社説中盤では「大学トップが入試を私物化し、不当な利得を手にしていた実態は信じ難い。調査委員会が報告書で、『大学の自殺行為に近い』と断じたのはもっともだ」とも書く。

「私物化」「自殺行為」。その通りだ。さらにこう書いている。

「得点調整は、2006年から続いていた。同窓生の子弟を優先的に入学させ、多額の寄付金を集める動機があった、と調査委は指摘する。経営上の思惑があるのだろうが、受験生への説明責任を欠いた不透明な入試は許されまい」

どう考えても自殺行為であり、「経営上の思惑」など問題外である。