大学や行政組織で「任期付き職員」の急増が問題視されている。だが「国際協力」という分野では、「任期付き」にネガティブな印象は少ない。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの矢野麻美子研究員は「国連職員など国際協力の分野では任期付きのポストが多いが、そのような背景から自己研鑽が促進され、働き方を自分自身でデザインすることにつながっている。こうした働き方はほかの業界の参考にもなるのではないか」と考察する――。

筆者は共著『世界で活躍する仕事100:10代からの国際協力キャリアナビ』(東洋経済新報社、2018年)で、「近年人生100年時代を生きるための新しい働き方・生き方が提唱されているが、そこで提唱されることは、実は国際協力の業界では何十年も前からすでに実践されてきたことに思える」と述べた。

それは終身雇用が保証されていない任期付き職員(主に公的機関における任期の定めのある雇用形態)のポストが多い国際協力の業界では、各人が常に自己投資、自己研鑽に励み、時には組織を移り、または独立するなどして経験を重ね、組織に頼らずに生き抜く術を身に付けるよう努力しているからだ。

任期付きポストの現状

国際協力の業界、特にその重要アクターといえる国際連合などの国際機関では、「任期付き」の形態をとるポストが多数を占めている。例えば、国連事務局職員のうち、終身雇用/継続雇用は10,072名(2016年12月末時点)であるのに対し、任期付き雇用・臨時職員のポストは29,579名と、全体の74.6%を占めており、任期付きの雇用が中心である。

国連職員以外でも、「外務省在外公館専門調査員」「外務省ジュニア・プロフェショナル・オフィサー(JPO)派遣制度」「草の根・人間の安全保障無償資金協力外部委嘱員」「内閣府国際平和協力研究員」「国際協力機構(JICA)専門家」「JICA国際協力専門員」「青年海外協力隊」「JICAジュニア専門員」などは、いずれも数年の任期付きポストだ。