もちろん全員が終身雇用を望んでいないわけではない。業界的に終身雇用ポストが稀少であるため、それに固執してはキャリアが築けないという現実もある。数年単位で職場や居住環境が変わるため生活は安定せず、安定を求めて公務員や民間企業に転職する人もいる。

新時代の働き方・生き方

本稿は任期付きの雇用形態が必ずしも良いと言いたいものではない。不安定な面はあるが、このような任期付きポストが多いことを背景として、これまで実践されてきた国際協力業界での自由な働き方・生き方から、日本社会が学ぶことはあるように感じている。

働き方の多様化、雇用形態に対するネガティブ・差別的な見方の払拭、働き方・生き方の自己デザイン。こうしたことは国際協力の業界では強く求められ、実践されてきた。そこでは多くの日本人が、日本型雇用形態の枠にとらわれることなく、性別を問わず、自由にキャリア形成をし、世界中で活躍している。

共著では、そのような国際協力業界における多種多様な機関や職業を取り上げ、そしてその中で自己投資、自己研鑽に励み、組織にとどまり、あるいは組織を移りながら、時には独立するなどして経験を重ねてきた人々の事例をケーススタディーとして多数紹介した。国際協力業界における自由で多様な働き方・生き方は、これから人生100年時代を歩む若い世代、そして今現在、自己の働き方・生き方を見直し始めた社会人まで、幅広い世代の参考となるはずだ。

矢野 麻美子(やの・まみこ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 国際研究室研究員
国際基督教大学(ICU)卒、ロンドン大学大学院(UCL校)修了(都市経済開発修士)、東京大学法科大学院修了(法務博士)、司法試験合格者。銀行員、NGO事業、国連人権高等弁務官事務所(在キルギス)、内閣府国際平和協力研究員を経て、2016年6月より現職。専門は国際人権・人道法、アジア法務、不動産法務。学術ジャーナル、新聞などのメディアで多数の執筆活動を行っており、2018年7月6日発売の書籍『世界で活躍する仕事100:10代からの国際協力キャリアナビ』(東洋経済新報社)では監修・編集・執筆代表(共著)を務める。
(写真=iStock.com)
【関連記事】
柔軟な働き方が実現すれば"副業"が広がる
働きすぎな日本の「社畜」に伝えたいこと
最高裁判決で「同一労働同一賃金」実現か
法改正でも転勤前提の働き方は変わらない
60歳以降の収入が10倍以上になる働き方