「自民党に広がる閉塞感を表していないか」

岸田氏の不出馬を巡って新聞各紙の社説もそれぞれの視点から主張している。

7月25日付の毎日新聞の社説は冒頭部分で「これにより総裁選は、首相が一段と優位になったのは確かだろう。だが候補の一人がこうして早々と戦線離脱すること自体、『安倍1強』状況の下で自民党に広がる閉塞感を表していないか」と訴える。

毎日社説は「衆参両院で自民党が多数を占める今、総裁選は事実上の首相選びの場だ。中でも今回は首相が3選されれば、首相在任期間が戦前、戦後を通じて最長となる可能性が出てくる重要な選挙である。しかも2015年の前回総裁選では安倍首相が無投票で再選された。今回、複数が立候補すれば政権復帰後初めてとなる」と解説する。

やはり沙鴎一歩が前述したように「首相在任期間が最長」ゆえの深刻な問題は起きる。

そこを毎日社説はこう指摘していく。

「第2次安倍政権が発足して、もう5年半が過ぎた。官邸が官僚の人事を握り、それを恐れる官僚が首相らに忖度する弊害が指摘されて久しい。首相自らの問題でもある森友、加計問題も決着せず、財務省は文書改ざんまで引き起こした」
「安全保障関連法など反対意見を封じて与党の数の力で成立させる強引な手法も目立った。経済政策も当初、アピールしていたような成果をあげているとは言えず、首相は『まだ道半ば』と繰り返すばかりだ」

どの指摘もその通りである。

「国民を巻き込んだ総裁選」を考えてほしい

さらに毎日社説は「岸田氏が不出馬を決めたのも、安倍首相と戦えば、総裁選後の党人事や内閣改造で自ら率いる派閥に不利になるかもしれないとの計算が働いたと思われる」とも指摘する。

岸田氏が毎日社説の指摘するような政治家だとすれば、自己の利益追求を考えた行動だ。

最後に毎日社説は「国民を巻き込んだ総裁選」を訴える。

「かつて多くの首相候補が激しく争っていた頃は、総裁選は政策や政治姿勢を転換し、国民の党に対するイメージを変える場でもあった。政権党の開かれた論戦は国民全体にとっても有益だ。『安倍首相3選』の結論ありきで、多様な議論が展開されないとすれば、これもまた民主主義の危機と言うべきである」

国民あってこその総裁選なのである。自民党はそれを忘れている。自民党には一度、原点に返って政党の在り方というものを考え直してほしい。