朝日は「我も我もと『安倍1強』に付き従う姿」と批判
次に朝日新聞の社説(7月26日付)を見てみよう。
朝日は1番手の社説で「1強になびく危うさ」との見出しを掲げ、まずこう指摘する。
「5年7カ月に及ぶ長期政権の下、我も我もと『安倍1強』に付き従う姿は、闊達な論争が失われた党の姿を映し出す」
沙鴎一歩は「自民党は『安倍1強』にすがりつき、来年の参院選と統一地方選を勝ち抜こうという魂胆なのである」と書いたが、「我も我もと『安倍1強』に付き従う姿」とは朝日社説らしいいやらしさが多少あるものの、的を射た表現だ。安倍1強の結果、「闊達な論争が失われる」のも、その通りである。
朝日社説は「結局のところ、不出馬の決断で1強政治の継続を肯定したことになる」と書いて「背景には人事での処遇をちらつかせる党内の権力闘争があるのだろう」と推測し、「安倍氏を支える麻生副総理兼財務相は先月、『「(総裁選で)負けた時には冷遇される覚悟をもたねばならない』と揺さぶりをかけた」と麻生氏の“嫌がらせ”を挙げる。
そのうえで「こんな発言がまかり通ること自体、1強のおごりを示しているというほかない」と鋭く批判する。
「1強のおごり」。安倍政権をひと言で表現すると、この言葉に尽きる。
岸田氏の不出馬は「忖度」なのか
さらに朝日社説は「従う者は厚遇され、意に沿わないものは冷や飯を食う」と批判し、「森友・加計問題で、行政の公正性と政治への信頼を損なった忖度の構造が、官僚だけでなく、選挙で選ばれた国民の代表たる国会議員の間にも根を広げているのは憂うべきことだ」と主張する。
果たして岸田氏の不出馬は忖度なのか。
朝日社説らしい見方だが、勢いに乗った安倍首相とは一戦を交えずにポスト安倍をしたたかに狙うのだろう。したたかさは政治家にとって欠かせない。今回の不出馬表明はそちらの方ではないか。
朝日社説は「強引な国会運営にしろ、政権をめぐる疑惑の放置にしろ、1強政治の弊害が誰の目にも明らかな今、総裁選で示される自民党の選択は極めて重い」と自民党の責任を指摘し、そのうえで「党内では石破茂元幹事長らが出馬の意向をみせており、前回2015年のような無投票にはならない見通しだ。どこまで政策論争が深まるか、党員・党友による地方票の行方とともに注視したい」と訴える。
最後に指摘する。
「1強の裏に広がるのは、活力なき政治だ。一人の権力者になびくだけの現状は危うい」
朝日社説は安倍1強の結果、生まれたのが「活力なき政治」と指摘しているわけだが、これには賛成である。