「軽度の発達障害で、暴走族の世界にもなじめなかった」
【田原】安田さんのご著書を読みました。幼少期から、なかなか大変なご経験をされましたね。
【安田】父のDVなどが原因で、両親が離婚。寮に入ったり、父方の祖父母と暮らしましたが、折り合いが悪くて、友達の家を泊まり歩いたり、ときには公園で野宿をしたりしていました。
【田原】気が進まなければお話しにならなくていいですが、お父さんはどうして暴力を?
【安田】感情のコントロールが非常に苦手な人でした。当時はそういう言葉がなかったですが、私と同じく発達障害の傾向があったのかなと。上手くいかないことがたくさんあったのではないかと思います。
【田原】壮絶な環境で育って、よくグレませんでしたね。
【安田】じつは不良の真似事もしました。ただ、僕も軽度の発達障害があって、暴走族の世界にもなじめなかった。どんくさいので、結局、どの世界に行っても自分の居場所をつくれないんですよね。
【田原】どんくさいというより、言いたいことを言っちゃうからじゃないですか。著書を読むと、黙っていれば目をつけられずに済む場面なのに、言いたいことを言った結果、いじめられるパターンを繰り返している。
【安田】そうかもしれません。空気を読めなくて、「なんだ、あいつは」となることはよくありました。「この場ではこう言ったほうが丸く収まる」とわかることもあるんです。でも、考えたことを言ってしまいたいという衝動を抑えられなくて。
【田原】中学時代はまったく勉強してなくて、高校は偏差値の低いところに入った。ところが、高2のころに突然、やる気を出して勉強するようになった。どうしてですか。
【安田】まず将来に対する不安がありました。学校もあまり行ってなかったし、さすがにこのままではまずいなと。受験を具体的に意識するようになったのは、2001年の年末です。その年、アメリカで同時多発テロが起きて、その後アフガニスタンへの空爆が行われました。僕は自分が虐げられてきたという思いが強くて、不条理なことに人一倍敏感なタイプ。アフガニスタンの人々にとって空爆は不条理だったはずで、「紛争や戦争を解決して、世の中から不条理をなくしたい」と考えるようになりました。