「私はもう年だから」「オレなんかには無理だよ」。そんな謙虚な言葉も、たびたび重ねられると、周囲は「卑屈」と受け取めるようになります。本人が50代という成熟をむかえるべき世代であればなおさらです。「話し方の“加齢臭”」を避けるには、どうすればいいのでしょうか――。

※本稿は、福田健『話し方の「加齢臭」』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

“謙虚”おじさんが嫌がられる理由

「卑屈」っぽい話し方になるきっかけは人それぞれですが、多くは年齢による知力、体力、瞬発力の衰えが原因です。

福田健・話し方能力向上協会代表理事

加齢が原因で、卑屈な言い方になったなと思ったことやきっかけはありますか? という質問をしたところ、

「若い頃に比べて頭の回転が遅くなり、動きも緩慢になり、以前のような仕事能力は、いまや発揮できない自分に気付きはじめたとき〈オレより若いヤツの方がいいんじゃないの?〉と思いました」(運輸業/管理職/54歳)
「もう年だからできないのでは? という気持ちと、まだやれるかな、という気持ちの間を揺れ動いています」(広告/営業事務/58歳)
「もう年だから体がついていかないよ、と言ってしまっている」(不動産/営業/52歳)

という返答でした。

「卑屈臭」が漂う最初のきっかけは、自分のできないことを認めて、「私はもう年だから……」「物忘れが多くて……」と、相手に迷惑をかけないように話しているのですが、やがて、それが日常的な口グセとなって、卑屈臭になってしまうのです。

「卑屈臭」の場合、そもそも初めから卑屈という人はいないはずです。なんらかのきっかけとなる出来事、経験を経て、「卑屈」になるのです。

言ったこちらは何の気なしでも、言われた相手はどう答えてよいか困ってしまいます。
例えば「年だから疲れちゃってね」と言われた場合、「お疲れのところすみません」など、おわびしなくてはいけなくなります。