日本発だった家庭用ビデオ、CD、液晶テレビ……

日本の家電産業は、かつては世界に先駆けて新しい価値を生み出すことが非常に得意でした。家庭用ビデオやCD、そして液晶テレビのコンセプトなどは、いずれも日本のメーカーから生まれたものです。技術的に優れた製品を作り出し、それが消費者に受け入れられ、高収益に結びついていたのです。

ソニーは過去最高益を見込む(写真は社長の平井一夫氏)。(時事通信フォト=写真)

ところが、今世紀に入り、日本の家電産業は失速します。背景にあるのは、デジタル化による競争環境の変化です。アナログ時代は、部品と部品を組み合わせる際、そこに匠の技が必要でした。しかし、デジタルの世界では、基本性能が大幅に向上し、技術的進歩の差がわかりにくくなったうえ、組み合わせが容易になった結果、参入障壁が低くなり、誰もが簡単に高品質な製品を作れるようになりました。技術だけでは勝ち残れない状況が生まれたのです。