他者を巻き込み行動するリーダーシップが世界標準

「リーダーシップ」と言えば、日本では経営者や管理職など、権限や役職を持った人が発揮するもの、というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。しかし、海外の先進国では、リーダーシップは組織の上位階層だけでなく、すべての従業員が発揮すべきスキルという認識が趨勢となっています。なぜなら、急激な環境変化に即応したり、イノベーションを創出したりするには、権限者や役職者によるリーダーシップだけでは限界があるからです。そのため、権限や役職に関係なく、目標を達成するために、自然発生的に他者を巻き込み行動するリーダーシップが、世界標準になりつつあるのです。

グーグルでは誰もがリーダーシップを発揮する組織をつくる。(時事通信フォト=写真)

権限や役職に関係なく、ということは、リーダーシップを発揮する人が多数存在することになります。日本には「船頭多くして船山に上る」ということわざがあるように、リーダーが複数いると、組織がうまく動かないのではないか、と思う人もいるかもしれません。確かに、号令することだけがリーダーシップだと考えれば、そうなるでしょう。しかし、権限と関係ないリーダーシップを持った船頭であれば、船を目的地まで安全確実に運航するという共通の目標のために、自分は何をすべきかを考え、その役割に徹した仕事をします。したがって、リーダーシップを持っている人が多ければ多いほど、目標を達成しやすくなります。

このようなリーダーシップは、誰でもトレーニングによって身につけられます。アメリカでは、1980年代に、グローバルに展開する企業の間で、権限のない人にもリーダーシップが必要だと広く考えられるようになりました。それに応える形で、90年代にアメリカの大学でリーダーシッププログラムが急増して普及し、現在ではほとんどの大学で教えられています。

日本で従来行われてきたリーダーシップ教育は、成功したリーダーの講演を聴き、感想を話し合うといったスタイルが一般的でした。しかし、そのやり方では、対象者との距離が遠すぎて、リーダーシップを身につけるまでの道筋を想像できません。一方、アメリカの大学では、実際にリーダーシップを発揮してみて、それが機能するかどうかを周囲からフィードバックしてもらい、修正してもう1度やってみるというサイクルの繰り返しで習得する手法が頻繁にとられています。

私は、日本の大学でも世界標準のリーダーシップ教育が必要と考え、アメリカの大学などで使われている手法を参考にして独自の教育プログラムを開発し、学生に教えるとともに、全国の高校・大学にリーダーシップ教育を普及させる活動を行っています。