自分の会社の後輩だけでなく、他社の若手社員も呼び捨てにする人がいる。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は「基本的には『オレのほうがお前よりエラい』というマウンティングの表れ。威圧的な口調は、周囲に『クソ野郎』と誤解されるリスクがある。誰に対しても『敬語』『さん付け』を徹底しておけば、大きな間違いは起こらない」とアドバイスする――。

人間関係のキモは「言葉づかい」にあり

なんの努力をすることもなく、簡単に他人から「人格者」扱いされる技がある。別にビジネス書を読む必要もないし、一念発起して留学する必要もない。リスクを取って起業したり、寄付したことをSNSで報告したりすることでもない。長期にわたる厳しい修行も不要である。

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その技とは「身内に対して丁寧にしゃべる」こと、そして外部の人間に対しては相手が年下であろうとも敬語を使い、「さん付け」をするということだ。

これらを励行するだけで、どれだけトクをするか! 自身のステップアップのために、と分厚いビジネス書を読みあさったり、受験者数のやたらと多い資格を取ったりするより、はるかにお手軽で、即効性も高い。日本で仕事をしつづけるのであれば、「敬語」「さん付け」だけで、想像以上に他のビジネスマンと差別化ができる。

人間の感情は相対評価

私はビジネス書なんて自発的に読んだこともなければ、資格取得の勉強をすることもなければ、営業をすることもないまま、フリーランスとしての仕事を順調に獲得しつづけてきた。なぜ、そうしたラッキーな状況にあるのかといえば、基本的には「あの人には仕事を頼みやすい」と周囲に思ってもらえているからだろう。その基礎にあるのが「敬語」と「さん付け」なのだ。

誰しも若いころは、オッサン、オバサンから命令口調で業務を指示される。「山田、次の会議で使うエクセル、さっさと作っとけよ!」といった形で、高圧的な命令を受ける。だが、これを「山田さん、次の会議で使うエクセル、作ってください。何日の何時までに仕上げてくれたら、とても助かります」といった調子で依頼されたら、若手はどう感じるだろう。

基本的に、人間の感情というものは相対評価になりがちである。荒々しい命令口調の先輩と丁寧な口調の先輩がいた場合、立場が下の人間は丁寧な先輩のことを人格者と捉える。人格者と捉えられた人間は、その評判が周囲にも伝わり、会ったこともない人からも人格者扱いをされることとなる。