こうした北朝鮮の漁業の問題点について、韓国産業銀行のレポートは、次のようにまとめている。

「老朽化した漁船・漁業用機器、技術の遅れ、油・漁具・冷凍倉庫設備不足で、生産能力を十分に活用できていない。しかしながら、(北朝鮮政府は)14年に続き、15年度にも水産部門における『魚の豊作』を強調し、生産量の高目標を提示した。(結果、)過度の捕獲と養殖が行われ、水産資源が損なわれる可能性が高い」

発見されずに漂う船も多数か

なお、北朝鮮の漂流船が発見されるのは、日本海沿岸に限った話ではない。12月2日、韓国・東海地方海洋警察庁は、日本海にある鬱陵島の北方84キロメートル地点で漂流していた北朝鮮船舶を発見・送還している。船舶が発見されたのは、北方限界線から南方29キロメートルの地点。発見当時の乗員数は8人だった。調査によると、北朝鮮船舶はイカ漁業をしている最中、潮流や気象悪化の関係で北上できず、漂流するはめになったということだった。

同じ鬱陵島近辺では、昨年12月中旬にも北朝鮮船舶3隻が漂流しているのが発見されている。そのうちの1隻は、9月中旬に咸鏡道エリア(朝鮮半島北東部)から出発したが、船舶の故障で3カ月間も漂流。発見されるまでに、多くの船員が飢死していたことが後の調査で明らかになっている。

北朝鮮の指導部は、「国民に寄り添う姿勢」をアピールするため、また経済制裁を突破するための手段として水産業の強化をうたっている。しかしながら、その政策が国民の命を脅かすという本末転倒な結果を生んでいるのだ。漂流が発見された北朝鮮船舶は、全体の一部にすぎないだろう。誰にも知られることなく、日本海を漂い続ける木造船や漁民がさらに増えていく可能性は大いにありうる。

今後、日本としては北朝鮮漁船の問題にどう向き合っていくべきか。構造的な問題だけに、一過性の対策では解決することができないということだけは間違いなさそうである。

(写真=時事通信フォト)
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