結局シワ寄せは家族に。介護離職の危機も増大
要介護度の判定が厳しくなれば、さまざまな問題が生じます。特に深刻な問題は、すでに要介護認定を受けている人が「認定更新」を受ける時です。
更新は、原則として1年おきですが、利用者の状態が安定している時は最大2年、不安定な時は1年以内の更新もあります。この更新で、要介護度が軽く判定されることがあれば、利用できていたサービスが利用できなくなる恐れがあります。Iさんが具体例で説明してくれました。
「たとえば要介護3の方を同居している娘さんが介護しているとします。平日はすべてデイサービスを利用することで、仕事を続けることができた。ところが、認定更新によって要介護2と判定されてしまった。2では他のサービスとの兼ね合いで、デイサービスを減らすことになり、娘さんが自力で介護する日が増えてしまい、離職を決断せざるを得なくなった。それによって困窮し、追い詰められていく……。こんな事態が起きることも考えられます」
▼自治体の“都合”で介護スタッフの負担も増加
要介護度の判定が厳しくなると、ケアマネージャーにもプレッシャーがかかるといいます。要介護認定は、申請から認定まで約1カ月かかります。ただ、突然寝たきりになったというケースでは、認定が出る前に介護サービスを受ける必要があります。
こんな時、ケアマネは利用者の状態を見て、たとえば「要介護2の認定はおりるだろう」といった見込みを立ててケアプランを作成し、サービスを入れることが多いそうです。これまでは、そうした想定でサービスを開始できましたが、判定が厳しくなれば、「想定外」のケースが増えるかもしれません。
「判定が厳しくなれば、要介護2の人が要介護1に“格下げ”されることが考えられます。要介護1の限度額を超えるサービスを入れてしまった場合、超えた部分は利用者さんやご家族に10割負担を強いることになります。結果的に軽めの要介護度でサービスを入れざるをえないでしょう。しかし、それでは十分なサービスが提供できているとはいえません。利用者さんの期待に応えられないということは、ケアマネにとってつらいことです」(Iさん)
少子高齢化で、国や自治体の財政は年々厳しくなっているといわれます。これまで通りのサービスが続けられないという場面は、これからさらに増えてくるでしょう。しかし自治体の“都合”によって、十分な介護サービスを受けられなくなったり介護スタッフの負担が増したりするようなことが、許されていいのでしょうか。改正法の施行は来年8月。自治体が改正の意図を取り違えることがないように、弾力的な運用が求められていると思います。