はやりのユニット型は職員の負担が大きすぎる
空室が出る要因として、施設側の事情もあります。
多床室は介護職員が効率的にケアできますが、ユニット型は個別ケアのため職員の負担が大きくなります。介護施設はただでさえ人手不足。給料はたいして変わらないのに仕事の負担が重いところに働き手はなかなか集まりません。
老人ホームでは最低でも利用者3人に対し1人の介護職員を配置しなければならないという基準がありますが、その基準を満たすことができず、空室があるのに利用者を受け入れられない特養があるとMさんは言うのです。
「つまり、空きが出ているのは厚労省の方針で新設が進められたユニット型特養。理想と現実のギャップが生んだ空室といえます。たしかに入所者の方々のことを考えたら、個室であることが理想です。しかし、料金が高くて入れない人がいるという現実がある。そもそも特養って、利用料が安いのが最大の利点じゃないですか。収入が少ない要介護者のセーフティネットでもある。その辺の目配りを十分にしないまま、空室を出してしまっている状況はやはりおかしいですよね」
介護関係者でも、ユニット型支持派と多床室支持派に分かれて議論が行われることが多いそうです。
「でも、どちらがいいというのではなく、ユニット型も多床室も十分に整備して、利用者さんの状況に応じて選択できるようにするべきだと思います」(Mさん)