スウェーデンを真似た「ユニット型」が増加中

特養は「従来型」と、2001年以降に新設された「ユニット型」のふたつのタイプに分けらます。

従来型は4人同室の多床室が主です。しかし、それでは入所者のプライバシーを保てないということから、厚生労働省は特養の個室化を推進。2001年以降に新設された特養には個室が設けられるようになっています。ユニット型とは、その個室の入所者10人程度をひとつの生活単位=ユニットとして職員を配置し、ケアをする形態です。

ユニット型特養は福祉先進国のスウェーデンのケアスタイルを取り入れたものです。入所者は個室で寝起きし、そのユニットを担当する職員から個別にケアを受けます。食事や入浴の介助もユニットごとに行われ、個室に隣接した共同スペース(リビング)で入所者同士が交流することもできます。

※写真はイメージです

従来型の多床室でのケアとユニット型の個室でのケア。入所者のことを考えれば、個室のほうがいいに決まっています。病院であれば原則として「退院」がありますが、老人ホームはいわば終の棲家。病院のように施設側で決められた人と同じ部屋でずっと暮らすことになるのは、精神的な負担が大きいといえます。

最近では多床室でも、プライバシーに配慮して、ベッドまわりをカーテンではなく、建具で覆うことで「個室風」にしているところもあるようですが、同じ空間にいることに変わりません。寝ている時のいびきや認知症の人の独り言などが聴こえることがあるでしょう。排泄介助では臭気も漂ってきます。

一方、個室ならば、そうした問題はありません。また、家族が訪問してきても、個室で気兼ねなく話ができる。ケアに関しても個別ですから、自分のユニット担当の顔見知りの職員に安心して任せられるというメリットもあります。自宅の快適さには及ばないまでも、それに近い環境で生活できるのがユニット型というわけです。

▼デメリットは月の利用額が4万~5万も高くなること

いいことずくめです。しかし、問題がないわけではありません。Mさんはこう語ります。

「ユニット型特養は、多床室に比べ料金がかなり高いのです。月額利用料の目安は多床室が8~9万円なのに対し、ユニット型は光熱費や設備の維持費がかかるため12~14万円ほどになります。老人ホームの利用者さんの頼みは年金ですよね。その支給額から見て、多床室の料金なら払えるけど、ユニット型は無理という人はかなりいる。にもかかわらず、新設の特養はユニット型ばかり。その結果、空室が出てしまうんです」

多床室の利用額8~9万円より月4~5万円ほど高くなってしまう。このため空きがあるのに、入れないという状況が生じているのです。