安倍晋三首相が9月28日の臨時国会の招集日に衆院解散に踏み切る、と新聞各紙が報じている。新聞の社説も9月18日付から19日付にかけ、一斉に早期解散に対する見解を論じた。各紙の主張は革新の朝日新聞と毎日新聞が解散反対、保守の読売新聞と産経新聞が解散賛成と従来の公式通り。新聞社の体質はどこまで行っても変わらないが、真に国民のことを考えているのはどの新聞だろうか――。

朝日社説は「森友・加計隠し解散」と批判

朝日新聞の社説(9月18日付)。見出しは「年内解散検討 透ける疑惑隠しの思惑」。

9月18日付の朝日社説は「衆院議員の任期は来年12月半ばまで。1年2カ月以上の任期を残すなかで、解散を検討する首相の意図は明らかだ」と指摘し、安倍首相の意図をこう書く。

「小学校の名誉校長に首相の妻昭恵氏が就いていた森友学園の問題。首相の友人が理事長を務める加計学園の問題……」

「臨時国会で野党は、これらの疑惑を引き続きただす構えだ。冒頭解散に踏み切れば首相としては当面、野党の追及を逃れることができるが、国民が求める真相究明はさらに遠のく。そうなれば『森友・加計隠し解散』と言われても仕方がない」

首相の伝家の宝刀である衆院の解散。これを抜いて野党にバッサリと切り付ける。「森友・加計隠し解散」という呼び方。皮肉を込めていうと、選挙戦の結果はどうあれ、とてもうまいやり方である。どこのだれが安倍首相に入れ知恵したのだろか。安倍首相が相談によく訪れるあの新聞社のトップかもしれない。

しかし、朝日社説が主張するようにその真相究明があやふやになれば、今後も大きな不公平がまかり通ることになる。

朝日社説は「野党は憲法53条に基づく正当な手順を踏んで、首相に早期の臨時国会召集を要求してきた。冒頭解散となれば、これを約3カ月もたなざらしにしたあげく葬り去ることになる。憲法の規定に背く行為である」とも批判する。

「解散権の乱用というほかない」

朝日社説は「そもそも解散・総選挙で国民に何を問うのか」と問題提起し、「首相の狙いは、混迷する野党の隙を突くことだろう」と書く。

「野党第1党の民進党は、前原誠司新代表の就任後も離党騒ぎに歯止めがかからず、ほかの野党とどう共闘するのか方針が定まらない。7月の東京都議選で政権批判の受け皿になった小池百合子知事が事実上率いる都民ファーストの会は、小池氏の側近らが新党結成の動きを見せるが、先行きは不透明だ」と解説したうえで、「都議選での自民党大敗後、雲行きが怪しくなっている憲法改正で、主導権を取り戻したい狙いもありそうだ」と書く。

最後に「北朝鮮情勢が緊迫化するなかで、政治空白を招く解散には明確な大義がいる。その十分な説明がないまま、疑惑隠しや党利党略を優先するようなら、解散権の乱用というほかない」と主張する。