東京五輪までに500店舗、売上高1兆円

ドンキホーテHDが1号店を開設したのは、1989年3月である。売上高が1000億円を突破したのは平成14年。平成17年に2000億円台に乗せ、3000億円台(平成19年)、4000億円台(平成20年)、5000億円台(平成23年)を経て、平成26年に6000億円台に到達。平成28年7000億円台、そして平成29年(2017年)は8000億円台と、まさに平成という時代ともに成長してきた企業である。

『図解!業界地図2018年版』ビジネスリサーチ・ジャパン著 プレジデント社

総合スーパーや百貨店に代表されるように、全体としては不振が目立つ小売業のなかで、なぜ右肩上がりの成長を実現しているのか。

同社は「激動する外部環境や移ろいやすい消費者心理に対して、迅速かつ柔軟性を発揮しながら解を導き出す機動力」と分析するが、「客数×単価×数量」の歯車がうまくかみ合っていることが大きい。

商品構成のバラエティの広さとディスカウト力を武器に集客。“ついで買い”をしたくなる雑然とした店舗レイアウトも特長だ。24時間営業の店舗に代表されるように、深夜ビジネスの先駆者でもある。

安値での仕入力に加えて、「情熱価格」などプライベートブランド商品(PB商品)の投入も成長を支える。4K対応の50V型液晶テレビの初回分3000台を発売1週間で完売するなど、売上高に占めるPB商品の割合は、すでに10%を超す(17年6月期は11%)。

立地やライバル店などの状況に応じた個店主義も功を奏しているのだろう。東京国際空港(羽田)の国際線ターミナルにも出店し、外国人旅行客に人気のお土産品を中心に展開。中国人などの“爆買い”の急失速で業績下降に見舞われている店舗が目立つなかで、同社は、菓子や化粧品、医薬品などの販売でカバー。約60%の道頓堀御堂筋店(大阪)を筆頭に、国際通り店(沖縄)、新宿東口店(東京)、銀座本館(東京)、中洲店(福岡)などは、免税売上高構成比が30%を超す。

同社飛躍のきっかけのひとつは、経営破綻した総合スーパーの長崎屋を2007年(平成19年)に買収したことだ。現在、グループ全体の売上構成比は、食品33.1%、日用雑貨品22.1%、時計・ファッション用品19.1%、家電製品8.3%などだが、今後は非食品の利益を原資に食品の価格競争力を強化するなどして、総合スーパー業態に代わる店舗づくりの実現を目指す。

さらに8月24日にはユニー・ファミリーマートHDとの資本・業務提携を発表した。ユニーが運営するスーパー「アピタ」「ピアゴ」などの2~3階にドン・キホーテを入居させる計画で、まず6店を対象に18年中にも転換を始めるという。ユニーが運営する「アピタ」「ピアゴ」は約200店ある。ここでも長崎屋を立て直した経験が活かされそうだ。

秋にはシンガポールに東南アジア1号店をオープン予定。当面の目標は東京五輪の開催までの500店舗、売上高1兆円。流通・小売りの「台風の目」として、今後も目が離せない。

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