業績拡大の大前提は積極的な投資活動
業績の拡大や株価上昇が期待できる企業は、どうやったら見つけられるのか。ひとつのヒントは、「キャッシュフロー(CF)計算書」にある。著書『図解!業界地図2018年版』(プレジデント社)で、主要企業のCF計算書の主な金額を紹介している理由もそこにある。
一言でいえば、CF決算書は企業のキャッシュの増減を示すものだ。企業の活動を営業・投資・財務の3つに区分し、「営業CF」「投資CF」「財務CF」として、それぞれにおける入金と出金を計算。入金が多ければ「プラス(黒字)」、出金が入金を上回れば「マイナス(赤字)=△」とするのが基本である。
中でも、注目すべきは投資CFだ。同じ決算書でも財務状況を示す「貸借対照表」や儲け具合を示す「損益計算書」は、企業の“これまで”を示すものだが、投資CFからは、将来を見据えた投資規模など会社の戦略や今後の方向性が読み取れるからだ。
実際には、投資CFは設備投資やM&A(企業の買収・合併)などに投じたキャッシュと、子会社や有価証券などの売却で得たキャッシュを加減して求めるが、単純に「△」がついている金額の大小に注目するだけでいい。例えば、ソフトバンクグループである。
17年3月期に限れば、ソフトバンクグループは本業(営業CF)で1兆5007億円のキャッシュを新たに獲得する一方で、その2.8倍に相当する4兆2135億円を、英国半導体企業の買収などに投じたことがわかる。
CF計算書を開示するようになった2000年3月期からの累計では、営業CFで獲得したキャッシュは8兆1098億円。それに対して、投資活動に費やしたキャッシュは14兆8055億円である。
このように、国内企業では他に例を見ないほどの積極的な投資を実行してきたことで、ソフトバンクグループは飛躍的に業績を拡大。2000年3月期には4222億円にすぎなかった売上高は、9兆円に迫るまでになったのだ。
もちろん、投資への出金が入金を上回ることで生じる不足分は、借入金などで穴埋めするのが一般的であり、財務CFの黒字(入金超)は新規に資金調達を実行したことを意味する。その借入金の返済能力などのチェックは欠かせないが、業績拡大の大前提は積極的な投資活動にあることはいうまでもない。