11万部超のベストセラーとなった『哲学用語図鑑』から2年。ついに『続・哲学用語図鑑』(田中正人著、斎藤哲也監修)が発売となります。目玉は「日本編」と「中国編」。書籍に収録した全70人の哲学者のうち、今回は「日本編」から、西田幾太郎、田辺元、三木清、九鬼周造、和辻哲郎、鈴木大拙の6人を紹介します。その哲学がギュッと詰まったイラストをご堪能ください――。
日本に「哲学」という概念はなかった
「哲学」という言葉は、philosophyに対する日本語がなかったので、明治期に西周が作った訳語です。それまで日本人は、西洋人のように、哲学(論理)と宗教をはっきりと分けて考えてはいませんでした。日本の思想は、習慣、修行、儒学、仏道などの融合体だったからです。
「哲学」という言葉がなかった以上、「哲学」という概念は日本には存在しませんでした。同じく「宗教」という言葉も概念も明治以前にはありませんでした。たとえば、親鸞や道元などの思想は、「哲学」や「宗教」といった概念で成り立ってはいないので、彼らを哲学者とはあまりいいません。もともと西洋の概念であった「哲学」という言語を日本の思想にあえてあてはめる必要はないわけです。
ただし、日本の大学機関では、仏教思想を「インド哲学」と呼ぶこともあります。また、「東洋」という呼び方も注意が必要です。「東洋」は「西洋」の勢力拡大とともに、普及した概念だからです。日本でも明治期に入って「東洋」や「東洋学」という概念が西洋から入ってきました。
本書は、日本に「哲学」という概念が生まれた後の哲学者を紹介します。この意味では、西田幾多郎が最初の哲学者です。その後、西田を引き継いだ哲学者たちは京都学派と呼ばれています。