人がためになる話をしても、マスコミが有用なニュースを流しても、情報の受け手がその価値を見抜けなければ、宝の持ち腐れだ。経営コンサルタントの中原圭介さんは、「情報を生かすには、日頃のトレーニングで脳を鍛えておくことが重要です」と力説する。

経営コンサルタント/経済アナリスト 中原圭介氏

脳のトレーニングの前にまず、「思考の材料である知識を貪欲に吸収すべき」というのが中原さんの持論。速く走るには、足の筋肉を太くしなければならないのと同じ理屈だ。若いときは、知識の丸暗記でもかまわないという。

そうした点で中原さんが気になっているのが、若い人が新聞をあまり読まなくなっていること。読んでいても、ネットニュースで断片的に情報を押さえているくらいの若者が少なくない。新聞は社会で起こっている出来事をわかりやすく、まんべんなく伝えている。その新聞を読むのが習慣になれば、知らぬ間に幅広い知識が身につく。

「できれば、新聞は全ページに目を通したほうがいい。でも、関心の薄い記事の場合、リード文を拾い読みしてもかまいません。忙しいときは、重要な情報が載っている1~3面を読むだけでも、最低限の知識が蓄えられます」

そうしたうえで、本格的に脳を鍛えていくのには本を読むのが最適だという。中原さんは、「できれば哲学書のような、難解な古典に挑戦してほしいですね」という。

古典は人類に長年読み継がれてきた知の文化財。書かれている内容はよく練られ、論理も磨き抜かれている。ただし、当時の知識階級向けに書かれているので、読みこなすにはかなりの読解力がいる。分厚い哲学書の読破は、いわば“脳のフルマラソン”を完走することでもあるのだ。

「哲学書を読んでいれば、合理的な考え方ができるようになり、思考力や洞察力がぐんと高まります。ただし、初心者にはハードルが高いので、哲学の入門書や漫画からスタートしてもいいでしょう」