出会って10秒で相手の懐へ入る
一度見たら忘れない、顔前に大きく飛び出たリーゼントと白い手袋姿の「ブランド王ロイヤル」森田勉氏。
「この頭はうちの商品と同じで、本物だよ。髪の毛はカツラじゃないから、触ってみて」
出会って10秒で始まる鉄板の“ツカミ”だ。ボリューム感たっぷりの頭を前かがみになって突き出す森田氏の1日は、毎朝6時50分の起床で始まる。まず、全国紙や雑誌を読み、競輪の予想のためにスポーツ新聞にも目を通す。必ず9時にはかかってくる証券会社の支店長や営業マンから株価について情報を仕入れる。
「今、証券取引に熱を上げているんだよ。金利や原油価格といった国際情勢や政治、経済などあらゆることにアンテナを張り巡らす必要のある株の売買は、僕にとって頭が一番活性化するときなんだ」
頭脳を始動させた後は、肉体のリフレッシュ。ジョギングで2駅、10キロを走って家に戻ると、エアロバイク20分、チューブを使った腹筋、ベランダでゴルフの素振りを行って、筋トレに励む。
「男は体を鍛えないとノルアドレナリンが分泌されない。この脳内ホルモンの分泌が少なければ性欲、物欲などの欲求がセーブされ、やる気が起きないよ」
シャワーで体力維持・増進の汗を流し、書斎の机に向かう。出社前の午前中は、とんちんかんな少子化対策に対する有効な処方箋をまとめるためのデータ収集をしたり、生産性を上げる営業の極意を伝授する本の執筆に精力的に取り組む。午後1時、会社に出社。まずは前日の売り上げについて報告を受け、販売方針の打ち合わせを行い、アポイントの確認や営業の電話をかけるといったルーティンワークをこなす。
古希を迎えた森田氏の体を使うこと、稼ぐことのバイタリティーは、学生時代の皿洗いやナイトクラブのボーイなど60のアルバイトをこなしたことで培われたという。そのアグレッシブな行動力は、大学卒業後に入社したホテルオークラ、転職したセンチュリーハイアット(現ハイアット リージェンシー)での計16年の営業マン時代にも遺憾なく発揮された。
「僕はホテルマン時代に、宴会の営業担当としてほかの人の10倍以上の売り上げがあったんだよ。達成率1314%を挙げたこともある。企業の宴会や研修とかを『うちのホテルでやってくれ』ってお願いして契約を取るんだが、ライバル会社に決まっていた案件もことごとくひっくり返していた」
ホテルオークラ時代には2400泊の予約を取ったこともある。夏の時期の都内のホテルは、夏休みで人が海や山に出かけてしまい、ガラガラの「夏枯れ」状態になっていた。そこで創業者の指示で総セールスキャンペーンが行われ、「全従業員が知り合いに電話をかけて呼び込め。その成績を全部発表する」ということになった。