『三國志』『信長の野望』歴史から何を学ぶか

2015年に30周年を迎えた、歴史シミュレーションゲーム『三國志』。2016年1月28日には、シリーズ13作目が発売された。同じゲームタイトルが、これだけ長くユーザーから支持される例はきわめて少ない。その間、経営者とゲームクリエーターであるシブサワ・コウの一人二役をこなしてきたのがコーエーテクモホールディングスの襟川陽一社長である。

コーエーテクモHD 社長・ゲーム作家 襟川陽一氏

「いまでも仕事をしているとき以外は、大体ゲームをしています。自社の歴史ゲームから他社のロールプレーイングゲームまで何でも。面白いとエンディングまで行きますから、1つのゲームで50時間ぐらいかかるでしょうか……。もう夢中になっているときは、経営者と制作者の役割は渾然一体。意識して切り替えはしていません」

そんな襟川社長だが、最近のウイークデーの過ごし方は、おおむね一定している。毎朝6時に起床して、8時までゲームをする。朝食を摂り、9時ぐらいに出社。1時間の昼休みを挟んで、6時まで指示や決裁、会議などをこなす。それ以降は、日によってことなるが、7~9時の間に帰宅。夕食後は就寝までゲーム。土曜、日曜日のいずれかは40代からはじめたゴルフ。近くの戸塚カントリー倶楽部でワンラウンド回る。もう1日は、やはりゲームだ。

「パソコンがマイコンと呼ばれていた時代、私が30歳のときからゲームを作りはじめました。自分たちしかできない、新しい価値を追求するという流儀は終始一貫して変わらない。ただ会社を設立した当時、ゲームが商売になるとは思っていませんでした。けれども、株式公開できる企業にまでなった以上、責任を持って面白い作品を開発したいと思っています」

ゲームのテーマに歴史を選んだのは、司馬太郎や山岡荘八といった作家の小説が好きだったからだ。印象に残っているのは、司馬作品では『三國志』と並ぶ同社の大ヒットシリーズ『信長の野望』につながる『国盗り物語』。そして、全26巻を読破した『徳川家康』(山岡荘八)だという。

「ただ小説は、読むという意味では一方通行です。ところがゲームは、プレーヤーが仮想の世界に入り込んで、特定の人物として活躍できます。例えば、『三國志』なら自分が劉備になって、蜀の中国統一を実現することもできますから、手応え、達成感がある。つまり、ifが楽しめるという面白さ。そうした特性が歴史に合うのではないでしょうか」