厳しい状況にあっても神算鬼謀で打開する

実際、ゲームの『三國志』で、どの登場人物を選んでも、成すべきことは“国づくり”にほかならない。それを現代に当てはめれば、会社経営そのものである。それだけに、ゲームを通してマネジメントの訓練をし、リアルの会社における問題解決法のヒントを見つけることも可能なのだ。

襟川社長は「三国志では諸葛亮孔明の生き方が好き」だというが、劉備の三顧の礼に迎えられ草庵を出て、蜀建国にいたる歴史には、多くの経営的要素がある。現代流にいえば、天下泰平をめざす建国の理念、天下三分の計という戦略の確立、魏および呉に対する戦術の立案、人材登用、そして外交。こうした意思決定のすべてが含まれる。

「なかでも、最後の最後まで劉備、その子どもの劉禅に徹底して尽くす姿勢は見事です。あの忠義こそが、孔明の原動力になっているのではないか……。どんなに厳しい状況に置かれても、神算鬼謀で打開します。なかでも、曹操率いる魏軍100万を、呉と連合し、長江に破った赤壁の戦いで見せた土壇場での底力には魅了されます。私の場合は『ゲームが好きだ』ということが出発点。そうした原点があれば、トラブルが起きたとしても、楽しみながら乗り越えていけるという見本です」

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とにかく『三國志』には、数多くの武将、参謀、文官がいて、それぞれに身体や知力、武力、運勢などが設定されている。プレーヤーは、そうしたデータを読み、最適な人的配備を考え、組織として最高のパフォーマンスを発揮するような戦い方をしないと、戦乱の世を勝ち抜くことはできない。

ゲームの局面ごとに敵国の情勢なども判断材料にしながら、決断していく。当然、思いもしない結果を招くこともある。現代のビジネスの現場でも頻繁に発生するトラブルである。そこであせらずに、いかに素早く、かつ適切に処理していくかで経営者としての手腕が問われることになる。

なかでも人事の側面は大切で、働きに見合った処遇をしないと、部下の忠誠度が下がって謀反を企てられ、そこで自分自身の死を招くこともありうる。ゲームならリセットして、また一からやり直せばいい。けれども、現実では、思わぬ禍根を残し、会社と自分の将来を閉ざしてしまうこともある。

「その意味で、ゲームは多面的なデシジョンの繰り返しです。いってみれば、いつも自分が日々の現場でポジションや職責に応じて行っていることに通じる。ですから、何度プレーしても、そこに新たな発見があるわけです。『三國志』が、若い人だけでなく、比較的年齢の高い中堅のビジネスマンにもファンが多いのは、そうした部分に共感するからでしょう」