「営業の神様」と呼ばれる平成建設の秋元久雄社長。24歳で実社会に出て、最初の大手デベロッパーでは入社1年目からトップクラス。次の転職先となった大手ハウスメーカーでも、2000人以上いる営業マンのなかで、勤続7年間、つねに上位15番以内に入っていた。そんな秋元社長が上ってきた営業の神様への“階段”とは――。
まず皆さんに覚えておいてほしいのは、最もレベルの低い営業はお客さまに「ウチの商品はこんなに素晴らしいので、ぜひ買ってください」と、一方的に売り込む営業だということだ。お客さまにしたらうるさいだけで、門前払いされてしまう。
だから少しデキる営業マンになると、お客さまの潜在的なニーズを引き出していく方法へシフトする。師匠の型を守るところから始まって、それを破り、さらにそこから離れて自分の型をつくり出す師弟のあり方を表す「守・破・離」に置き換えると、売り込み営業で基本的な営業作法を身につけるのが「守」で、次の段階が「破」に当たる。
しかし、結局のところ、住宅の立地だったり、デザインだったり、お客さまがもともと持っていたニーズに合わせた結果「売れた」だけで、営業マンが主体的に「売った」とまではいえない。価格だって、お客さまのニーズに合わせようとしたら、どうしても抑え気味になる。営業の効率も決してよくはない。
そして、もう一段上の「離」に進むために私は、担当エリアの経営者、開業医といった所得の高い人や、大地主などの富裕層をターゲットに据えた“飛び込み営業”に徹した。経験上、とくに地方では上位5%の地主が、その地域の土地のおよそ50%を所有していることが多い。彼らはお金持ちで、成約できれば1件当たりの売り上げは、標準モデルの住宅を売ったときの何倍にもなる。
とはいえ、富裕層の“敷居”は高い。すでに立派な家を持っている。「家を建てませんか」と飛び込み営業をしたところで、「いま住んでいる家で十分満足しているから」と断られるのがオチだ。大半の場合、彼らにはもう欲しいモノがない。言い方を変えると、自分たちのニーズが何なのかわからない人たちなのだ。