デキる営業は共通して話を聞く

「信頼」には文字通り「信じて頼る」という側面があり、その裏にはお客さまの“絶大なる期待”が存在する。しかし、人の好みは千差万別で、住宅の場合、そこに住むすべての人が100%満足することはまずない。営業マンは浅い信頼関係のままで浮かれていると、次第に現実の壁に行く手を阻まれ、お客さまの期待という“重圧”に潰されてしまう。

では「より深い信頼」とは何かというと、お客さまが「あなたを用いたのは自分だから」と営業マンの裁量を暗に認め、それに対する自分の責任も自覚している関係性になった状態のこと。これこそが、お客さまが営業マンを「信じて用いている」という意味で「信用」なのだ。営業マンは余分な重圧を感じることがなく、存分に力を発揮できる。結果、「ほどほどに快適に住めていて不満はない。彼に任せてよかった」となる。

そうした信用される営業マンの共通点に「お客さまの話をよく聞く」ということがある。自分の話を聞いてもらうことでお客さまは満足し、「この営業マンは自分のよき理解者だ」と思い始め、こちらの提案にも耳を貸してくれるようになる。だから足繁く通うのだ。

そうやって「信用」を勝ち得た段階で、初めてお客さまにとって「本当に必要とされる営業マン」になれるのだ。その結果、「結婚する娘の家を建てたい」「別荘がほしい」などといった、リピート仕事の好循環へつながっていく。私も、親、子、孫と3代にわたって40年以上お付き合いのあるお客さまが何人もいる。

40歳のときに「一流の大工を社員として育て、日本一の建設会社をつくりたい」と考え、沼津で創業したのが平成建設だ。2014年10月期の売上高は160億円の見通しで、今秋に東京23区内に初の営業拠点を開設する。しかし“生みの苦しみ”は当然あり、最初の10年間は私が1人で営業をこなした。その壁を乗り越えられたのも、本当に必要とされ、「信用」される営業マンであったからだと思う。

▼営業で信頼されるには?

×まず売ろうとする「ウチの商品はこんなに素晴らしいんです」
 ↓
まずニーズを把握する「何がお望みですか? 不満はありませんか?」
×商品を売る「新商品にご興味ありませんか?」
 ↓
情報を売る「ライバル店はこんな売り方をしていますよ。対抗するにはこの商品で……」
×お客様の要望を何でも聞き入れる「私を頼りにしてください」
 ↓
できないことはできないと言う「私をうまく使ってください」
平成建設社長 秋元久雄
1948年生まれ。静岡県立韮山高校卒業後、自衛隊体育学校に入校し、ウエートリフティングでオリンピック出場を目指す。その後、大手のデベロッパー、ハウスメーカー、地元ゼネコンでのトップ営業としての活躍を経て、89年に沼津で平成建設を創業。
(伊藤博之=構成 南雲一男=撮影)
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