重要事業の多くに1年以上の遅れ

「うーん。これは『大西派』一掃の大粛清人事だ」

大西洋氏(2013年12月)。

大西洋・三越伊勢丹ホールディングス(HD)社長「辞任」のニュースが駆け巡ってから1週間、同社および事業会社三越伊勢丹の役員人事と組織改正が公表された(4月1日付)。その内容を目で追っていた業界関係者が驚きの声を漏らした。「さすがにここまでとは予想していなかった。次期社長の杉江俊彦専務は『本業の立て直し』、つまり百貨店事業への回帰を口にしている。これで大西さんが進めてきた改革路線は、確実に後退するね」。

象徴的なのが、同時に発表された組織改正であるという。

「一例を挙げれば、三越伊勢丹の百貨店事業本部に『宣伝部』という古めかしい名前が復活する。3月まではHDの『マーケティング戦略部』だった組織。三越伊勢丹は大西さんの肝煎りで、かつての丼勘定から厳密な効果測定に基づく現代的な宣伝戦略へ変えようとしていた。『マーケティング戦略部』はそのことを現す名称だった。新経営陣も改革の意図を十分理解していたはずなのに、なぜあえて古い組織名を復活させるのか」

百貨店事業の強化と多角化を軸に三越伊勢丹の構造改革を進めてきたのが2012年就任の大西氏。今回の失脚により、実質的な「改革先送り」が進むだろうとこの関係者は見る。