社長が「百貨店はやらない」と話した理由
「GINZA SIX」が、4月20日に銀座にオープンした。松坂屋銀座店の跡地に隣接街区を加えた2街区一体整備(第一種市街地再開発事業)により誕生した大規模複合施設で、売場面積は4万7000平方メートルと銀座エリア最大となる。
建物は地下6階、地上13階。店舗数は約240。その半数以上が「旗艦店」と位置づけており、中央通り沿いには、「セリーヌ」「ディオール」など6つのラグジュアリーブランドが、2~5層の大型メゾネット店舗を構える。運営には、J・フロントリテイリング、森ビル、住友商事のほか、仏高級ブランドLVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)の出資する不動産会社が参画する。
2013年に閉店した松坂屋銀座店は、銀座では最も古い歴史をもつ百貨店だった。しかし、松坂屋を運営していたJフロントの山本良一社長は、かねてから「GINZA SIXでは、百貨店はやらない」と表明している。これは、GINZA SIXでは、「販売や経営のフォーマット(業態)」を百貨店とは異なるものとするということである。
銀座は、日本さらには世界有数の商業地として、多くの客を引き寄せ続けている。この事実は変わらないが、そこに求められる小売のフォーマットは、時代の文脈のなかで変化している。それはなぜなのか。GINZA SIXが持ち込もうとしている「革新」を通じて、その理由について説明しよう。
1990年頃のピーク時には10兆円ほどあった国内百貨店の売り上げは、四半世紀が経過した現在、6割程度の6兆円以下にまで縮小している。ここで注意が必要なのは「百貨店」という業態の定義である。「6割程度にまで縮小した売り上げ」とは、あくまでも日本百貨店協会に所属する店舗を対象とした数字にすぎない。
そもそも「百貨店」とは何であろうか。歩くだけでわくわくするような巨大な商業空間を設け、ファッション衣料、服飾品、化粧品、生活雑貨、食品などを販売し、レストランや各種の催事などのサービスを提供する。これが「百貨店」というものなのであれば、その対象は、日本百貨店協会に所属する店舗の外側に広がっている。ここで私が言及したい「外側」とは、ショッピングセンターのことである。
ショッピングセンターとは、小売店などを集積させるため計画的に開発・管理された商業施設の総称である。その形態は企業体によって様々だ。「イオンモール」や「ららぽーと」のように車でアクセスしやすい郊外に巨大モールを開発する企業体もあれば、「ルミネ」や「東京ソラマチ」のように大都市の中心商業地の施設を主力とする企業体もある。