ブランドが銀座に路面店を出すのはなぜか

長期低落が続く百貨店業界。爆買い需要は一瞬の気の迷いで、ブームが1年半ほどで消え去ると、その反動で売り上げが大幅に減速、再び販売不振の泥沼に沈みかけている。

百貨店が置かれている状況は東京銀座に行くとよくわかる。有楽町駅から銀座4丁目方面に延びている晴海通り、松屋通りなどの両側には、今や高級ブランドのブティックが立ち並んでいる。銀座といえば昔は三越や松屋がある銀座通り(中央通り)がメインストリートで、歩行者天国も催されるし、ブランドのショップも集まっていた。しかし現在は有楽町駅から縦に延びる通りに高級ブランドの出店が集中して、マロニエ通りなどの不動産価格が高騰している。

銀座の高級ブティックともなれば賃料は年間億単位だし、店員だってバーガーショップのアルバイトのようなわけにはいかない。警備も24時間必要。コスト計算すると、売り上げでペイすることはまずない。銀座に出すような店舗は、いわゆるフラッグシップ(旗艦店)であり、広告宣伝塔の役割が大きい。ゆえに採算度外視のケースが多い。

そうまでしてブランドが路面店を出すのはなぜか。ブランド品はもちろん銀座の百貨店でも取り扱っている。しかし、世界中の名品が集まる百貨店ではブランドは埋没してしまう。ジャズのセッションでいえばサックスやピアノやドラムのソロパートがそれぞれにあるが、百貨店のブランドは横並びの美人コンテストのようなもので、プレイアップしてくれる場面がない。そんなフラストレーションから「百貨」店を飛び出して路面店でアピールしようというブランドが増えているのだ。

日本一の百貨店も販売不振(伊勢丹新宿本店)。(写真=AFLO)

新宿でも同様の景色が広がり始めている。新宿駅東口のスタジオアルタ前から新宿3丁目方面に抜ける新宿通り沿い。かつては伊勢丹と丸井ぐらいしか目立たなかったが、今やティファニーなどの高級ブランド店が路面に出てくるようになった。ブランドの路面店が華やかに通りを彩るのと対照的に、「日本一の百貨店」と言われてきた伊勢丹新宿本店でさえ、販売不振で業績を下げている。伊勢丹は老舗の三越と合併したがその効果がまるで出ていない。合併で効果が出るためには売り上げは1+1で2.3に、コストは1.6になる、ということが必要だ。しかしお公家様の体質からか、そうした効果が今のところまったく見られない。