候補者が「商品」となる政治マーケティング

政治マーケティングのプロセスは、商業マーケティングのプロセスとほぼ同様だ。つまり、マーケティング対象に関する内部・外部環境分析を踏まえて、狭義のマーケティング戦略であるセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングを策定した上で、ブランディング戦略として練り込み、その戦略と一貫性の高いマーケティング戦術(マーケティング・ミックス、プロダクト等の4P)を策定していく流れとなる。

大統領選挙における政治マーケティングと商業マーケティングの違いについてよく指摘されることとしては、(1)前者はもっぱら候補者個人が「商品」となること、(2)1対多数の戦いとなる同政党間の予備選挙から、事実上1対1の戦いとなる一般選挙へと、2つの性格が大きく異なるキャンペーンを戦い抜くことが要求されること、(3)勝者総取りなど独自の「ゲームのルール」があること、などがある。

図の「コトラーにおける政治マーケティングでの6ステップアプローチ」を見てほしい。

次回からはトランプの選挙マーケティングを対象に、コトラーのフレームワークのなかで、内部・外部環境分析に当たる「1.環境分析」、狭義のマーケティング戦略であるセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの策定に当たる「3.マーケティング戦略の策定」、ブランディング戦略に当たる「4.目標設定と選挙戦略の策定」について、解説していく。

田中道昭(たなか・みちあき)
立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授。シカゴ大学ビジネススクールMBA。専門はストラテジー&マーケティング、企業財務、リーダーシップ論、組織論等の経営学領域全般。企業・社会・政治等の戦略分析を行う戦略分析コンサルタントでもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役(海外の資源エネルギー・ファイナンス等担当)、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、オランダABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)、東京医科歯科大学医療経営学客員講師、グロービス・マネジメント・スクール講師等を歴任。著書に『ミッションの経営学』など多数。
http://www.rikkyo.ac.jp/sindaigakuin/bizsite/professor/
(写真=ロイター/アフロ)
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