トランプは大統領に適した資質を持つ人物なのか――画期的なプロファイリングにより、その強みと偏りが明らかに。危うい魅力の原因とは?
プロファイリングで判るトランプの強み
2017年1月20日、大統領就任式が終わり、第45代ロナルド・トランプ米国大統領が誕生した。
2016年11月9日の大統領選勝利演説で「すべてのアメリカ国民の大統領になる」(“President for All Americans”)と明快に宣言したトランプ。就任演説では、「大統領の就任演説」ではなく、「候補者の集会演説」のような水準にまで戻ったというのが率直な印象だ。
トランプがどうして3カ月弱の間に大きな軌道修正を迫られたのかを理解するには、トランプの戦略とともにトランプ自身の資質を理解することが重要だろう。
政治マーケティングにおいて、対象となる候補者や政治家の資質を分析することは極めて重要となる。商業マーケティングにおいても、創業者や経営者のセルフリーダーシップやセルフブランディングは極めて重要であるが、まさに人物そのものが「商品」である政治マーケティングにおいては、その重要性がさらに高まるわけだ。
米国の大学やビジネススクールでは、近年、セルフリーダーシップにおいて自分自身の強みや資質を客観的に把握するツールとして、ギャラップ社のストレングス・ファインダーが使われることが増えている。これはWebサイト上で177個の質問に答えることで、自分の強みを知ることができるもので、2016年11月時点で1500万人以上が受験し、有用性が高いことでも定評がある診断プログラムである。
今回、米国ギャラップ社日本法人での勤務経験があり、16年におよぶストレングス・ファインダーの実践経験をもつストレングス・コーチのM氏、ギャラップ社認定ストレングス・コーチである杉嶋奈津子氏と私の3名でのディスカッションをもとに、ストレングス・ファインダーによるトランプの資質のプロファイリングを行った。
この試みは私たち3名による仮説的なプロファイリングであり、トランプがギャラップ社の診断プログラムを受講した結果によるものではない。また、ディスカッションの材料としては、トランプの出演TV番組、集会での演説、選挙戦でのディベート、公開情報に基づくトランプの人物像、トランプと直接交友のある人物からの非公開情報に基づくトランプの人物像などの情報を使用した。
ストレングス・ファインダーでは、「責任感」「協調性」など34項目の資質が挙げられ、それらが「実行力の資質」「戦略的思考力の資質」など4つの領域で分類されている。診断プログラムを受講すると、その人の強みといえる上位5項目の資質が明らかになるというわけだ。
トランプについて34項目の資質を検討すると、図のような結果となった。