大統領選の行方を握る政治マーケティング
米国の政治には経営学のさまざまなエッセンスが取り入れられている。そのなかで政治マーケティングとは、選挙とその後の政権運営における各種の目的を実現するために発展してきた実践的なマーケティングの領域であり、選挙準備期間および選挙期間中の選挙マーケティングと選挙後の政権運営マーケティング(統治マーケティング)に大別される。
「現代マーケティングの父」と呼ばれるフィリップ・コトラーは、マーケティングの対象を商品・サービスや企業のみならず、広く非営利団体や社会にまで拡大した。政治マーケティングは、既に彼が1980年代頃から取り組んできた分野であり、後述する“6ステップアプローチ”はその規範的なモデルとなっている。
米国社会が複雑化する一方で、大統領選挙での戦い方は、選挙コンサルタントがTVを主要なツールとした時代から、ソーシャルメディアと地上戦の組み合わせであるO2Oが重要な時代へと変化している。それらのグランドデザインを形成するものとして、政治マーケティングの重要性がさらに高まっている。
2008年の大統領選挙で民主党大統領候補のオバマ陣営は、米国で権威あるマーケティング専門誌Advertising AgeのMarketer of the Year 2008に、数多くの有名企業をおさえて選ばれている。米国で4年に1度行われる同国最大の「戦い」であり、巨額な広告宣伝費が投入される大統領選挙は、マーケティング大国である同国において最先端のマーケティング戦略と戦術が駆使されるバトルフィールドなのだ。