もうカッコつけずに、媚びへつらうぐらいのほうがいいんじゃないですか? それまで後輩に偉そうにしていたやつが、急にびっくりするぐらいゴマすりだしたりしてね。イメージとしては、森繁久彌さん主演の映画『社長漫遊記』に出てくる三木のり平さんのような。そうそう、のり平さんを見習って、いっそチョビひげ生やしたらいい(笑)。

それでいて飲みにいくときは出世してない後輩を連れて、ガード下で、ワリカンで、安酒をあおって、「いつか見てろよバカヤロー」とくだ巻いてりゃいいんですよ。もう絵に描いたような安サラリーマンになる。

この際、汚れちゃいましょうよ。それだけやれば周囲も「あいつイヤなヤツだな」を通り越して、「しょうがねえな」と逆に笑えてきますから。そのうちキャラが完成して、違う道が見えるかもしれない。後輩に「俺のほうが出世したけど、あの先輩はいい」と評価されたり、ほかの後輩が「人間くさいんだよな~」となつくことだってあるでしょう。

媚びへつらい方でアドバイスを送るとするなら、ただペコペコ頭を下げていてはダメ。たまに相手の欠点をうまくイジるんです。たとえば女にモテるような意味を含ませながら、「もう、女泣かせなんだから!」って言われると、「何言ってるんだ君は~?」って気分がよくなっちゃう。よく聞くと、ただの悪口なんだけど(笑)。ここをうまく切り抜けてる人は、いい仕事をもらえますね。

売れてる後輩に嫉妬をしない

俺が中心となっている芸人の飲み会「竜兵会」から、後輩がどんどん巣立っていきました。土田晃之、有吉弘行、劇団ひとり……。俺が若手を発掘したわけじゃなくて、みんな自分の力で売れたわけです。一緒に飲むのが楽しくて、たまたまめぐりあわせがよかっただけ。でもこれだけ後輩が活躍していると、世間からは「後輩が上司になった」ように見えるかもしれませんね。

でも俺は後輩が自分より売れても、なんとも思わないんです。というのも、芸人の世界だと先輩―後輩という縦のラインは、結構しっかりしているので、後輩がいくら売れたからといって、先輩を立てる関係は変わらない。直接、後輩に指示されるわけではないから、そこで息苦しく感じることはありません。