リビングウィル(LW)の表明の仕方

自分が望まない延命治療を受けないためには、元気なうちに「リビング・ウィル(LW、尊厳死の宣言)」を書いておくことが大切です。LWとは「いのちの遺言書」とも呼ばれ、延命処置お断りという意思表示をする文書です。ちなみに、LWとエンディンングノートと遺書は別のものです。エンディングノートは遺産処理やお墓など死の周辺の希望を記しておくもので、遺書は亡くなった後のことですで、死んで初めて効力が発生します。LWは、死ぬまでのこと、つまり死ぬまでに自分が受ける医療について記した文書です。たとえ生きていても、もはや意思表示ができなくなる場合もあるので、そうしたケースを想定して書かれるものと考えてください。

一般財団法人・日本尊厳死協会は、LWの啓発・普及と保管を行う市民団体です。1976年に発足し、今年で40年目になりました。全国に約12万人の会員がいます。私は現在、協会の副理事長および関西支部長を拝命しています。

協会では2000円でLWを表明する会員になります。会員は万が一に備えてお財布やバッグなどに常にLWカードを持ち歩いています。LWに興味のある方は、協会に問い合わせください。

LWは元気で意思表示できるときに表明してください。もし認知症が進行して判断が難しくなったりすると表明できなくなりますので、できるだけ早めに作成することをお勧めしています。具体的には協会が用意した尊厳死の宣言書に署名・捺印するだけで簡単です。協会ではLWの原本を保管しており、LW表明についての問い合わせにも対応します。ご家族や身近な人にLWのコピーを配っておくこともお勧めします。もし気が変われば、LWはいつでも撤回できます。

アメリカでは国民の41%がLWを書いています。一方、日本は約12万人ですから、人口のわずか0.1%程度にすぎません。残念ながら日本ではいまだ死はタブーで、LWを書いて最期の医療を自己決定するという文化が成熟していません。しかし高齢化は今後ますます進みますし、医療も発達しているので、LWの意義が高まっていくでしょう。現場の医療者もLWがあるととても助かります。

長尾和宏(ながお・かずひろ)
医療法人社団裕和会理事長、長尾クリニック院長
東京医科大学卒業後、大阪大学第二内科に入局。95年兵庫県尼崎市で開業。複数医師による365日無休の外来診療と24時間体制での在宅医療に従事。メデイアでの発信が多い。「平穏死・10の条件」(ブックマン社)、『病院でも家でも満足して大往生する101のコツ』(朝日新聞出版)、『病気の9割は歩くだけで治る』(山と渓谷社)など著書多数。
日本尊厳死協会 電話 03-3818-6563 http://www.songe--nshi-kyokai.com
(取材・構成=田中響子)
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