今日本は「多死社会」を迎えている。現在、年間100万人以上が亡くなっており、2040年の死者数は約170万人にのぼるという。そんな中で注目されているのが、人生の終末を迎えるための活動、「終活」である。
「もともと終活は、核家族化が進む中で、離れて暮らしている子供たちが困らないように遺言を残しておこうというのが始まりでした」と話すのは、第一生命経済研究所主任研究員・小谷みどりさん。「今はそれがさらに発展し『死の準備をすることは、自分の人生を振り返る、あるいは再発見する作業になる』として、終活の意味が広がってきています」と指摘する。
具体的には「エンディングノート」と呼ばれるノートに、自分が亡くなった後の希望などを記しておくのだ。10年9月に同商品を発売したコクヨでは、発売3カ月で目標を上回る5万部を超えたという。「09年、法的な遺言書が手軽に書ける『遺言書キット』を発売して好評だったので、その第2弾として企画しました。『遺言書キット』の経験から、若い人にも終活の需要があることが予測できたので、銀行口座や保険の加入状況など、従来の遺言書にはなかった項目も多数盛り込みました」(コクヨグループ広報担当の平岩和夫さん)。エンディングノートの類似商品も多数出ており、ブックファースト新宿店の高橋正嗣さんも「40代、50代の方によく売れていますよ」と購買層の広がりを実感しているという。
エンディングノートには「自分の葬式をイメージしてください」といった項目があり、誰が来てくれるのか、誰が弔辞を読んでくれるのかなど具体的なことを考えさせられる。自分はどんな人間関係を築き、どんな生き方をしてきたのか。死のあり方を考えることは、残りの人生をいかに生きるかを見つめ直すことにもつながるのだ。