まっ暗闇は眠った感覚器の「覚醒装置」だった――。今回プレジデント誌は2つの体験をした。ひとつはお笑い・演劇集団の大川興業が8年前から本格的に手がける「暗闇演劇」。暗闇の中、音と気配だけで観賞する芝居が大人気だという。観客の頼りは役者の台詞と息遣いのみ。物語は、若者が地下深い廃坑をさまよい、悩みを解決するというものだった。演出の大川豊氏は語る。

「お客さんには、スーツ姿の官僚や会社員も多いです。『視覚に頼らない、もっと手触りや匂いを生かした商品をつくりたい』と観賞後に話す起業家もいました。皆さん、耳、鼻、肌で芝居を観て脳裏に自ら映像をつくります。夜行性動物のように感覚器が鋭敏になり、発想力も豊かになるようです」