平均給与は406万円と過去最大の下げ幅を記録。不況の波が正社員に及んだことが原因の一つだ。業界・役職・学歴別に給与の最新事情を働く人の生の声とともに紹介する。
だが大企業に勤めているからといって安閑とはしていられない。例えばこんな話がある。ある大手建設会社では、13年度を目処に総合職の等級見直しを推し進めている。総合職の最上位である「主任技師」を廃止し、そのすぐ上の管理職に当たる、内勤なら「主査」、現場なら「工事長」への昇格制度を利用して管理職を増やそうというのだ。同社に勤める中堅の技師・黒田貴志さん(40歳)が語る、この昇格制度についてのホンネに耳を傾けてみよう。
「現場は残業が多く、特に主任技師だと本給の1.5~2倍近い残業手当がつきます。ところが主査になるとわずかな管理職手当はつきますが残業手当はゼロ。会社としては管理職を増やしたほうが人件費削減に直結するのはいうまでもありません。しかしわれわれ現場からすれば少しでも手取り額の大きいほうがいい。当然、最近は管理職への昇進拒否が増え続けています。もっとも一方では出世志向の強い人や肩書を意識する人は会社の要請に応じています。だから“一人管理職”もたくさんいて、あるグループでは女性を除き9割が管理職ということもあります」
その黒田さんのボーナスは減額を続け、この冬は03年時と同額程度まで下がってしまうという。主任技師制度が廃止になるまで粘れるだけ粘って現場にしがみつき少しでも多く稼いでおきたい、と考えている黒田さんである。
役職別の平均給与格差を見るとヒラ社員から係長、課長、部長と肩書が上がるたびに180万~190万円ずつ給与も確かに増えていっているのだが、黒田さんの例を見ると、一概にはそうとも言えない現実も潜んでいるようだ。(登場人物はすべて仮名)
※すべて雑誌掲載当時
(Gettey Images、ピクスタ=写真)