平均給与は406万円と過去最大の下げ幅を記録。不況の波が正社員に及んだことが原因の一つだ。業界・役職・学歴別に給与の最新事情を働く人の生の声とともに紹介する。
もはや家族で立ち向かうのも苦しいという生活保護世帯が激増している。この6月には137万世帯、過去最多を数えるようになった。長引く景気低迷を受け、国や自治体が支援を強化し、またその申請手続きを以前より柔軟に対応することにした結果、受給者が増加したという側面もあるが、全世帯の3%弱を占めるようになった主因はあくまでも雇用状況の厳しさにある。
千葉市在住の、ある地方銀行に勤務する大竹直人さん(41歳)は、リーマン・ショック以来ボーナスが10%減ったままの状況が続いているのだが、年収はほぼ1000万円あるという。それでも危機感を持っている。
「夜逃げとは言いませんが、隣人が住宅ローンを払えなくなり引っ越ししていきました。うちも今まで専業主婦だった妻が大型ショッピングモールのアパレル系の店に週3回、パートに出るようになりました。外食や旅行は減り、逆に夫婦喧嘩は増えちゃいましたね」
大竹さんの例を出すまでもなくこの不況は宿泊・飲食業を直撃している。業種間での平均給与格差を見ると、宿泊・飲食業は337万円でワーストなのだ。最も高収入業種の電気・ガス・水道などインフラ系は705万円だから、その半分以下でしかない。驚くべき業種間格差だといえる。
業種別で2番目に高い収入となっているのが637万円の教育・学習支援業だが、現場では一概にそうとはいえないようだ。都内で大手系列の学習塾を経営する中村優子さん(48歳)の話だ。
「塾の無料体験が年に数回あるのですが、小学3年生のお子さんを毎回連れてくる母親がいるのです。でも1年たっても正式入会はされなかった。それで今回の無料体験では、やんわりとお断りしました。それというのも、子どもは敏感で、周りのお友だちと比べて自分は無料体験のときだけ出席しているとの負い目を感じている素振りが見えたので、これは教育上いかがなものかと意見申し上げたのです。また2、3年前なら国語と数学、それに英語など最初から2教科、3教科で始めるお子さんもいたのですが、今はまずほとんどの方が1番安価な1教科での入会です」
「子どもは教え殺せ 馬は飼い殺せ」なる少々物騒な諺もある。子どもにはとことんまで教え込め、馬には十分すぎるほど飼料を与えよということで、幼いうちからしっかり勉強させろとの喩えだが、どうやら不景気は、教育の現場でお金をかけられる家庭とそうでない家庭の二極化を顕著にしつつある。
企業の規模で年収を見てみると、従業員1000人以上の大企業では590万円、100~999人が452万円、そして10~99人では381万円となっている。大企業と中小では209万円の差となっているのだが、どの規模の企業でも約10万円減少している。
また、99人以下の企業に勤める人の収入が最も高くなる年齢は45~49歳にかけてで435万円。だが大企業ではこの金額を30代前半ですでに手にしており、50歳過ぎのピーク時には779万円となる。まずは「寄らば大樹の陰」といったところだろうか。(登場人物はすべて仮名)
※すべて雑誌掲載当時