家族内泥棒は罪に問えるか
不要品を気軽に出品できるフリマアプリ「メルカリ」やオークションサイト「ヤフオク!」が人気を集めている。一方、ネット上では「大事にしていた物を家族に勝手に売られた」というトラブルもしばしば報告されている。物を持たない「断捨離」や「ミニマム生活」ブームの影響があるのかもしれない。もし自分の物を、整理整頓好きな家族に売られてしまったら、どう対処すればいいのだろうか。
いくら家族とはいえ、人の物を勝手に持ち出して売り払えば、窃盗罪が成立しうるが、加害者が近しい家族なら、罰せられることはない。「親族相盗」という特例があるからだ。
刑法には、親族間で窃盗や詐欺などの犯罪が発生したとき、刑罰を免除したり、親告罪とする規定がある(244条)。刑罰が免除されるのは、加害者が配偶者や直系血族(祖父母、父母、子、孫など)、同居の親族の場合だ。つまり勝手に物を売ってしまった妻や親が、処罰されることはない。前述の条件にあてはまらない親族が盗んだ場合は親告罪となり、盗まれた側が訴えない限り罪にならない。
なお、親族相盗は法律上、刑罰は免除されるが罪にはなりうるという不思議な規定だ。長谷川裕雅弁護士が、実際のケースを教えてくれた。
「離婚協議中に預金を勝手に引き出された夫が、警察に被害届を出そうとしました。家族内の窃盗が処罰されないことはわかっていましたが、裁判にかけて妻を困らせようとしたのです。ところが、警察は取り合ってくれない。理論上は家族内泥棒を有罪にすることができるのですが、現実は裁判どころか警察捜査の段階で門前払いです」