日本の電機メーカーが苦境に陥った中、「地味」「堅実」と言われた三菱電機は、絶好調だ。2015年度の売上高は過去最高の見通し。なぜこんなにも強いのか。その原点は2001年に打ち出された、あるスローガンにあった。

※前編はこちら(http://president.jp/articles/-/17913)

次に、現地生産戦略を紹介しよう。新興市場では生活の向上とともに自動車市場が伸びていくが、自動車の次にエアコン市場が伸びていく傾向がある。

「海外で三菱というと、三菱自動車を思い浮かべる方が多いとは思いますが、エアコンでも三菱電機のブランドは強い。一例はタイです。タイには扇風機が主流だった52年前から進出していて、トップシェアです。中国でもエレベーターが非常に強いこともあって、三菱電機のブランドは強いですね」(リビング・デジタルメディア事業本部長 杉山武史氏)

このエレベーター事業も現地生産がカギとなる。そもそもエレベーターは物量がかさむため、物流費や関税をミニマイズするなら現地生産がいい。地産地消することで、その国独自のニーズに沿ったものを作りやすくなるというメリットが生まれるのだ。

エレベーター事業で、海外で最も力を入れているのは、世界の需要の6割を占める中国だ。ビルシステム事業本部副本部長の佐々木信二氏(執行役員 三菱電機アジア代表)はこう言う。

三菱電機アジア社長 佐々木信二氏

「中国ではマンションの広告に『三菱エレベーター設置』と書くと、マンションが高く売れるといいます。製品価格は競合他社より10~15%高いのですが、それでもシェアナンバーワンです。価格だけじゃないというお客さまが最近中国でも増えている。安心・安全で信頼性の高いブランドや本物にこだわるという傾向が強くなっているのです」

とはいえ、現在、製造拠点は国内外で14カ所あり、すべての製造拠点で全部の品目を作るのは困難なため、コンポーネント分業も行っている。コンポーネントとは基幹部品のことで、エレベーターの心臓部である、いわゆる巻き上げ機、プリント基板などの品質的に難易度が高い部品のことだ。これら基幹部品のみ、マザー工場である日本と、グローバル製造拠点であるタイ、中国の工場が一括して製造する。そうすることで、投資効率を最大化すると同時に技術ノウハウも継承していく。

そうした地産地消とコンポーネント分業というのが、三菱電機全体に通じるグローバル製造戦略の重要な概念となっており、海外事業展開における強さの源泉なのだ。