エアコン、産業用ロボット、パワー半導体などの独自製品を展開し、高収益企業へ変貌した三菱電機は経済動乱時でも「営業利益率5%以上」の旗を掲げる。成長戦略の一環として、地球温暖化対策事業の拡大を打ち出し、この荒波に向かう。
08年度中間決算は営業利益率7%台
「総合電機3社」といえば、日立製作所、東芝、三菱電機の3社を指すが、もはやそうしたくくり方はほとんど意味がなくなっている。2001年頃を境にしたIT(情報技術)バブルの崩壊を契機に、各社の経営・業務内容は劇的に変化してきているからだ。
なかでも、それまで三男坊格だった三菱電機の巧みな変身ぶりは、顕著なまでに業績に反映している。売上高は03年度から07年度まで四期連続の増収、営業利益は02年度から5期連続で増益を達成した。三菱電機が大胆に舵を切った一連の構造改革の結果といえるが、総合電機3社の儲けを示す売上高営業利益率を比較すれば一目瞭然といっていい。日立製作所、東芝がともに3.1%なのに対して、三菱電機は6.6%(いずれも08年3月期)と倍以上の水準を確保している。
08年度の中間決算も重電や家電部門が好調で売上高は1兆8983億円、営業利益は1333億円と過去最高を更新、営業利益率は初めて7%台にのった。
さすがに通期では円高や消費低迷に直撃されて減収減益が避けられないが、5.6%の営業利益率を見込み、下村節宏社長は「景気の影響は受けても総崩れにならない体質を強化する点で、営業利益率5%以上は守らなければならない一線であり、何とかしたいと思っている」と述べ、逆風下でも死守すべき目標を明確にした。
営業利益率の高さを支える構造改革の中身を、すべて紹介するわけにはいかないが、ここでは成長戦略の一環として掲げられた「VI戦略とAD戦略の推進」に的を絞って話を進めることにしよう。
これらの略語は、強い事業をより強くするビクトリー(VI)戦略と、強い事業を束ねてソリューション事業の強化を目指すアドバンス(AD)戦略の2つからなる。平たくいえば、「強いものをより強く」し、さらに「それらを高度に融合して新たな事業を打ち立てる」ことに最大の狙いがある。
VI|AD戦略を推し進めるための“仕掛け”はおいおい明らかにしていくとして、最もわかりやすい事例であるカーナビゲーション・システムを取り上げてみたい。