「1000億円値切る」のは当然
シャープの鴻海精密工業による買収が正式に合意しました。
基本合意時の金額より約1000億円低い3888億円の株式を鴻海が買い取ることで66%の株式を取得するというものです。基本合意した後、1000億円「値切った」ということで、鴻海がだましてシャープと基本合意したように受け取られました。
しかし、これは買収交渉ではよくあることです。
買収交渉では、まず、基本合意をするのが通常です。ある時点での財務諸表などの状況をベースに、どれだけの株式をいくらで買い取るかを決めるわけです。そして、その後、被買収企業(今回ならシャープ)の事業内容を精査します。
シャープのケースでは、基本合意時に明らかになっていなかった「偶発債務」が3500億円程度あることと、業績見通しが違っていたことなどが判明しました。
偶発債務とは、将来裁判で敗訴しお金を払わなければならないなど、不確定だが将来損失を被る可能性のある出来事を指します。これがシャープの場合、3500億円ほどあることが判明したのです。
また、当初は2016年3月期決算で100億円の営業利益を予想していましたが、最終的には1700億円の赤字ということになりました。これらは基本合意時には判明していなかったことですから、最終合意に向けて買収価格を下げたのは、このような買収交渉を何度となく見てきた私には、それほど驚きに当たらないことでした。
買収交渉ではよくある話なのです。