「1000億円値切る」のは当然

シャープの鴻海精密工業による買収が正式に合意しました。

基本合意時の金額より約1000億円低い3888億円の株式を鴻海が買い取ることで66%の株式を取得するというものです。基本合意した後、1000億円「値切った」ということで、鴻海がだましてシャープと基本合意したように受け取られました。

画像を拡大
シャープ公式サイトより。同社は4月2日、鴻海科技集団と共同会見を大阪府堺市で開催し、鴻海科技集団を第三者割当先とする株式引受契約の締結について発表。

しかし、これは買収交渉ではよくあることです。

買収交渉では、まず、基本合意をするのが通常です。ある時点での財務諸表などの状況をベースに、どれだけの株式をいくらで買い取るかを決めるわけです。そして、その後、被買収企業(今回ならシャープ)の事業内容を精査します。

シャープのケースでは、基本合意時に明らかになっていなかった「偶発債務」が3500億円程度あることと、業績見通しが違っていたことなどが判明しました。

偶発債務とは、将来裁判で敗訴しお金を払わなければならないなど、不確定だが将来損失を被る可能性のある出来事を指します。これがシャープの場合、3500億円ほどあることが判明したのです。

また、当初は2016年3月期決算で100億円の営業利益を予想していましたが、最終的には1700億円の赤字ということになりました。これらは基本合意時には判明していなかったことですから、最終合意に向けて買収価格を下げたのは、このような買収交渉を何度となく見てきた私には、それほど驚きに当たらないことでした。

買収交渉ではよくある話なのです。