グローバル化、業界再編、リストラ……、企業を取り巻く環境は激変している。ライバル会社はどうなっているか、徹底レポートする。
攻めの経営で躍進する日立、東芝
攻めの経営で好業績を挙げる日立製作所、東芝に対し、経営再建中のパナソニック、シャープなど“東高西低”の様相を呈する電機業界。しかし、リストラに関しては業界全体で構造改革による合理化が加速している。
日立と三菱重工業の火力発電システム事業の統合で2月に誕生した新会社の社員は約2万3000人。うち日立出身の社員が1万5000人を占めるとされる。だが、出資比率は日立35%、三菱重工65%。新社長も重工出身であり、事実上重工の傘下に入る。日立の課長職の男性は「新会社の会長は日立出身だが、日立の役員との兼務。本社の社員にも新会社に行かないかと働きかけがあったが、統合後にリストラされるのではないかと恐れて手を挙げる社員は少なかった」と語る。
連結従業員数の減少では3万4200人と最も多いソニー。経営不振で4万人のリストラ計画を打ち出していたが着実に進んでいるようだ。昨年末には家電製造子会社のソニーイーエムシーエスの40歳以上、勤続10年以上の中堅社員を対象に希望退職募集を実施することを明らかにしている。同社は国内に5工場を持つが、テレビなどの販売回復の遅れが目立ち、一段の効率化が必要と判断してのリストラだ。
今年3月期の決算では黒字化、賃上げしたパナソニックだが、リストラの手綱を緩める気配はない。グループの三洋電機の総務・人事・経理などの間接部門における約250人の社員を削減。これによって三洋電機の直轄部門は1750人まで減少した。2009年にパナソニックの子会社となった三洋は白物家電を中国の家電大手のハイアールに売却するなどリストラを継続してきた。
残る主要事業は北米向けの薄型テレビ製造や電子基板を生産する三洋テクノソリューションズ鳥取しかない。かつては大手電機メーカーの一角を占め、同社の人事部は東大卒の優秀な人材で固められていたものだが、その凋落ぶりには言葉もない。
経営再建中のシャープは14年3月期の最終損益で黒字化。一方では賃金制度の改革に14年ぶりに踏み切る予定だ。これまでの年功色の強い制度から、より成果主義的な社員間の給与格差を広げる仕組みへの転換が予想される。電機業界は賃上げに浮かれている状況にはなく、リストラと賃金の両面からの締め付けがより厳しくなる可能性もある。