グローバル化、業界再編、リストラ……、企業を取り巻く環境は激変している。ライバル会社はどうなっているか、徹底レポートする。
深刻な人手不足が問題化
ここにきて、建設業界の受注環境は改善した。国土交通省の試算によると、2013年度の国内建設投資は約50兆円に回復。今年も震災復旧・復興需要は継続し、20年に向けた東京五輪の施設整備の前倒し発注が始まる。加えて、アベノミクス効果による設備投資も堅調で、オフィスや工場・倉庫建設などの着工も増えている。
むしろ、問題化しているのは急激な工事量の増加に伴う深刻な人手不足だ。というのも、この業界はバブル崩壊後、ずっと不況による受注難にあえぎ、人的なリストラも進んでいた。実際、ゼネコン各社の連結従業員数を見ると、大林組の2250人減(07年度比)を筆頭に、マイナスのところも多い。
もともと、土木・建設という仕事は「人が財産」といわれてきた。大型プロジェクトなら、基本構想から設計、施工へと進んでいく。その間、資材の調達や専門業者の選定も行われる。つまり、そうしたプロセスをマネジメントできる人材が不可欠なのである。それはいつの時代でも変わらない。
なぜなら、このような絶好調ともいえる経営環境がいつまでも続くわけではないからだ。だからこそ建設業界にとっては、いまがリストラ後の足腰を再強化するチャンスなのである。“人財”をじっくりと育て上げる時期と言い換えてもいいだろう。
大手ゼネコンの人事担当者は「今後はコア事業のグローバル化が重要な戦略になってくる。そこで求められるのは、現地で起こるさまざまな課題に対して的確なマネジメントができる一騎当千の社員にほかならない」と話す。
不動産業界も景気回復ムードによる投資意欲の復活で、地価は上昇トレンドに入っている。住宅については、今年4月と来年秋に行われる消費税率のアップが新規購入の大きなモチベーションになっている。土壇場での駆け込み需要を取り込んだことが増収要因となった。そのことが、住宅業界の年収回復につながったといえよう。
当然、大手各社は優秀な社員を確保していくことに努める。もちろん、営業職と経営企画部門では、必要とされる人物像も異なってくる。それぞれの特性に応じた採用と育成がなされるはずだ。
具体的には、顧客と向き合うスタッフには、コミュニケーション能力に優れたサービス精神旺盛な人が最適だろう。一方、経営企画マンであれば、新規物件の開拓能力はもとより、ファイナンスなど金融の知識も不可欠になってくる。新規、中途採用を問わず、人の獲得が将来を左右する。