鴻海を「ハゲタカ」扱いする大マスコミ
むしろ私が驚いたのは、この件ではテレビなどから数件の取材を受けましたが、マスコミはじめ多くの日本人が、鴻海が基本合意後に買収価格を値切ったことを、「ハゲタカ」のように敵対的に受け止めていたことです。
確かに、鴻海は2012年にシャープと買収交渉を行った際にも、最終的に合意に達しなかったという「前科」がありますが、鴻海から見れば、シャープ、とくにその液晶事業は、鴻海の将来をも左右しかねない、喉から手が出るほど欲しい事業です。
そして、鴻海は、単なるファンドなどとは違い、自分の事業の中でシャープの事業を活用したい事業投資家なのです。「金食い虫」である液晶事業に将来にわたっても投資を行うでしょう。
もちろん、交渉においては、適正価格で買収するということが、鴻海の株主の立場からも、シャープの株主の立場からも必要で、そのために先にも述べたように基本合意時点で合意された価格に、その後判明した事実に基づく調整を行うという形で決着したのです。
いずれにしても、シャープに限らず、今後もこのような買収が起こる可能性は少なくないでしょう。そうした場合に、「外資だからえげつない」といった短絡的な考えをもっていると大きな間違いを犯す可能性があります。
鴻海に買収されたシャープの今後を考えても、鴻海が本当に欲しかったのは液晶事業を中心とした事業だけだと考えられますから、それ以外の事業はスピンオフ(切り離して売却)する可能性も考えられます。
逆に、それらの事業に将来性を見出せばロールアップ(同業者の買収など)を行う可能性もあります。そして、繰り返しになりますが、今後このようなM&Aはどこの会社でも起こりうることです。