日経株式欄の●●が多くなれば、マイナス金利は失敗

▼マイナス金利の先行き 仮説2

もちろん、悪いシナリオも私は考えています。

これまでの低金利下でも、銀行の貸し出しはそれほど伸びていません。それが、さらに0.1%程度金利が下がったからと言って、簡単に企業の借り入れが増加するということはなかなか考えにくい状況です。

それなら銀行は、国債を売って得た資金で株式を買うかと言えば、株式には価格下落リスクがあり、しかも、企業業績が伸びなければ長期的には株価は上がりません。

そういう状況では、銀行はマイナス0.1%の金利でも日銀に預けておいたほうがマシだと考える可能性は低くありません。

また、そういう状況になれば、金利がわずかでもある国債を保有し続けるほうが賢明だと考え、国債を日銀に売らない可能性もあります。そうなると、景気も良くならず、株価も低迷、銀行の収益が落ちていくだけということにもなりかねないのです。

市場に流通する国債の量が極端に減った中で、日銀が大量の国債を買い続ければ、国債市場が乱高下することも懸念されます。

▼2つの仮説の検証ポイント

この2つのシナリオを考えると、今後、円安に振れるかどうかが大きなカギだと私は考えています。今回のマイナス金利により円安に振れれば、企業業績も上がり、株価も上昇しやすくなります。そうなれば、銀行も貸し出しも増やしやすいし、株式にも投資しやすくなります。

日本経済新聞株式面の片隅にある「短期金融市場」欄の「日銀当座預金残高」の数字が250兆円を大きく超えいくようだと……(写真の下線は編集部によるもの)

ただし、米国も昨年末に政策金利を上げたものの、一本調子に金利を上げられる状況ではないので、この先円安に振れるかどうかは結構微妙です。

ここまで、「マイナス金利」に関して、私なりの仮説を説明しました。

そして、その仮説の検証は、今後の経済の展開を見ていくわけですが、とくに、

・ドル円相場が円安に振れるかどうか
・銀行の現状250兆円程度の日銀当座預金(編集部注:次ページにて解説)が増えるかどうか(数字は、日経新聞朝刊の株式欄にある「短期金融市場」コーナーに掲載されている)

に私は注目します。

円安なら良いシナリオです。そして、それにより株価、景気の向上が起こるかどうかの検証が必要です。

一方、マイナス金利にも関わらず日銀当座預金が増えるようなら、これは先ほど説明した悪いシナリオで、景気が後退し、日銀はさらに金利のマイナス幅を大きくすると考えます。

仮説が違っていればその修正が必要ですが、いずれにしても、それを繰り返すことで仮説の精度が上がり、思考力が高まると思います。