ソニー、コマツ、DeNA……次々に有力企業との提携を進めるZMP。自動運転技術で注目される同社を率いるのが、谷口恒社長だ。東京五輪までに無人のタクシーを走らせる――目標実現の算段はいかに。
田中角栄が描いた40年前の構想
【田原】2015年5月、谷口さんのZMPはDeNAと組んでロボットタクシーという会社を立ち上げた。ロボットタクシーって、いったい何です?
【谷口】自動運転技術を活用した新しい交通サービスです。イメージとしては、携帯端末で目的地を指定するだけで自動運転車が迎えにきて、カメラで自動認識してドアを開けてくれて、最短ルートで送り届けてくれるようなサービスですね。
【田原】夢のような話だけど、そもそもどうしてそんなサービスをしようと思ったのですか。
【谷口】私は兵庫県姫路市の出身ですが、7~8年前に地元のタクシー会社が廃業して、駅前からタクシーがいなくなりました。仕方がないから隣の駅から呼んでいたのですが、隣の駅も似たような状況になって、いまは隣の隣の駅から呼ばないとタクシーに乗れません。これは姫路だけではなく、全国の地方で起きている現象です。本当は田舎にもいいところがいっぱいあるのに、交通の便が年々悪くなり、住みづらさが増しています。これを解決するには、運転手が要らない自動運転タクシーがいいだろうと。
【田原】過疎化が進んで人手が足りない地方で、新しい交通インフラをつくろうということですか。
【谷口】そうですね。地方の発展に交通インフラの充実は欠かせないと思います。3カ月くらい前、古本屋さんで田中角栄元首相の『日本列島改造論』をたまたま手に入れました。そこにはCVS(Computer-controlled Vehicle System)、つまりコンピュータで制御された乗り物システムの話が登場していました。私たちがやろうとしているロボットタクシーがまさにそれにあたりますが、40年以上も前にそれについて触れているのは、さすがだなと思いました。