【田原】へえ。僕も『日本列島改造論』を何度も読みましたが、それは知らなかった。田中角栄は「国土の均衡ある発展」と言って、そのころ“裏日本”と言われていた日本海側を発展させるためにいろいろ苦心していた。昔もいまも、地方活性化の答えの一つは交通インフラだというのは面白いね。

東京・文京区の開発拠点には世界中から技術者が集まる。

【谷口】田中角栄さんが情熱を持って国を変えたように、私もロボットタクシーで地方を変えたい。その思いが、この事業の根本にあります。

【田原】わかりました。気になるのは、本当にロボットタクシーが実現するかどうか。自動運転技術は、いまどこまで進んでいるのですか。

【谷口】自動車の運転は、レベル1から4まであります。人が運転する自動車はレベル1。次のレベル2がADAS(Advanced Driver Assistance Systems)と呼ばれる運転支援システムで、よそ見してぶつかりそうになったときにブレーキをかけてくれたり、高速道路なら人が運転しないでも真っすぐ走ってくれたりします。次のレベル3は、ADASがさらに高度になったもの。そしてレベル4が、運転手が要らない完全な無人運転です。いま自動車メーカーはレベル2を実装し始めていて、次のレベル3を目指している段階です。

【田原】谷口さんのところも、まずはレベル3を実現させるのですか。

【谷口】いや、私たちはいきなりレベル4の無人運転を狙っています。レベル3までは人が運転するので、ビジネスモデルも現在の延長線上といえます。一方、レベル4は無人なので、ゲームチェンジが必要になる。日本の既存の自動車会社はビジネスモデルを変えることを嫌ってレベル3を目標にしていますが、国際競争力を考えると、レベル4をやらないとダメ。いま、日本でレベル4に手を挙げているのはZMPだけです。

【田原】海外ではどうですか。

【谷口】アメリカのウーバー(UBER)というタクシー会社や、グーグルも自動運転の実験をやってます。

【田原】グーグル?IT企業が自動運転の研究をするんですか。いったい何が目的だろう。

【谷口】グーグルの社員じゃないのでわかりませんが、伝えられているところでは、自動運転車からいろいろデータを取り、グーグルマップなどと組み合わせて新しいサービスをつくるという話です。私たちと考えていることは違いますが、レベル4を前提としていることは同じです。