税率見直しの壁はまたもや消費税

ビール、発泡酒、第3のビールという3ジャンルごとに異なるビール類の税率一本化を目指す酒税法の見直しは、2016年度税制改正で見送られた。15年12月16日の自公両党による与党税制協議会で決定した16年度税制改正大綱には盛り込まれず、15年度改正に引き続き2年越しの「お預け」が確定した。

税率見直しの「壁」となったのはまたも消費税であり、17年4月の10%への税率引き上げと同時に導入される軽減税率を巡る自公両党の確執から、本格的な議論がないまま葬り去られた。これには17年度改正に棚上げされただけとの希望的な観測がある半面、10%への消費増税を控えた来年末での議論はより困難さを増すとの悲観的な見方もある。

今年の酒税法改正を巡っては紆余曲折があった。税制改正の議論が大詰めを迎える矢先の10月、自民党税制調査会の野田毅会長が事実上更迭された。軽減税率の導入に当たり、財務省が提案したマイナンバー制度を活用した還付方式の「日本版軽減税率」を“丸呑み”したことが官邸の反感を買ったからだ。

この結果、将来的にビール類の税率一本化を目指してきた財務省は大きな後ろ盾を失った。後釜の党税調会長に就いた宮沢洋一・前経済産業相も「税制によって(健全な商品開発や市場発展などの)経済活動がゆがめられた典型」とビール類の酒税を問題視し、就任当初は「今年の作業で検討していく」と酒税法見直しに前向きだった。

しかし、来年夏の参院選を控え、軽減税率の制度設計が最優先され、酒税法見直しは結果として早い段階から先送りが決まった。軽減税率を適用する対象範囲の線引きでも明らかになったように、いまや「政高党低」が鮮明な一強状態にある官邸が最終的に決断し、税制でかつて絶大的な決定権を握っていた党税調の地盤沈下は、酒税法見直しの先送りにも表れた。